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初恋サイダー:ロマン優光連載365

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2013年が最もカヴァーされていた時期ではないかと思われ、2013年の10月には一つの対バンライブで4組が「初恋サイダー」をやっていたという話もある。Buono!の曲という意味合いよりも、地下現場での湧ける曲の定番という意味合いのほうが大きくなっていた。

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そのロック的な楽曲は初期の段階から湧き曲として地下現場で受容されていたわけだが、2014年ぐらいには受容の形に変化が起きる。

地下アイドルのカヴァーとは本人が好きな曲、運営が好きな曲、みんなが知っていて盛り上がると思われる曲が選ばれるわけだが、「初恋サイダー」の場合、カヴァーされすぎてオタクの中に別の意味が生まれてきたのだ。

地下アイドルの場合、カヴァーといっても本家がリリースしているインスト音源かカラオケ店で使われているカラオケ音源などが使われることが多く、独自のトラックを制作することは珍しい。

そういうわけでオケは完全に同じ、演者のステージングの力や独自の解釈で異化すること(スーパー転校生による「サイレントマジョリティー」のように)によって差をつけていくしかないのだが、そういう演者もそうそういないわけで、単なるカラオケになっている人も珍しくない。代り映えのしないものを延々と観せられるのは苦痛になるのが普通ではないだろうか。

しかし、あんまり東京の地下アイドルがみんな「初恋サイダー」をやるものだから、なんとなくそれ自体を面白がる風潮も生まれてきた。

ようするに一部のオタクの中でネタ化してしまったのだ。

そういう現場の空気が反映されたのが熊田佳奈絵による高速「初恋サイダー」であり、連続「初恋サイダー」だった。

何となく面白いものだった〝「初恋サイダー」をカヴァーするという行為〟をわかりやすく面白いものにしたのである。時期的にははっきりとしたことは思いだせないが、2013年の末には高速「初恋サイダー」をやっていたのではないか。

もちろん、こういった試みは同時多発的におこなわれるもので、熊田以外にも、それ以前にもそういった試みをしようとしたアイドルはいたと思うのだが、最も成功したのが熊田であるのは間違いない。

その時代、地下アイドルの特定の界隈において「初恋サイダー」は熊田佳奈絵の代名詞であり、この曲は熊田の曲であるというような倒錯したことになっていたのだから。

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