ヒロインとは、女性の主人公、または作品の中で重要な役割を持つ女性キャラのことを指すようです。今回はヒロインがいろんな意味でとんでもない漫画を取り上げてもらいました。
PROFILE:
ロマン優光(ろまん・ゆうこう)
1972年生まれ。高知県出身。「ロマンポルシェ。」のディレイ担当。ソロのパンク・ロック・ユニット「プンクボイ」としても活動している。近著に『嘘みたいな本当の話はだいたい嘘』など。
X:@punkuboizz
「この人なに?」と思わざるをえない
この漫画のヒロインがとんでもないというテーマなのだが、なにをもって「とんでもない」とすればいいのか、非常に迷うところであり悩んだ。めちゃくちゃエキセントリックではないが「この人なに?」と思わざるをえなかった女性キャラについて触れていこうかと思う。
獣医学部を舞台に学生の日常をコメディタッチで描いた『動物のお医者さん』(佐々木倫子)。ここで取り上げるのは主人公・ハムテルたちの先輩にあたる院生の菱沼聖子である。
菱沼さんは一応長身の美人であるという設定であるが、そういう設定が頭に入ってこないくらいの変人で各種特異体質の持ち主。
体温計に表示されないほどの低体温。病気への抵抗力が異常に強いものの、そのためか痛覚が異常に鈍く、自分の盲腸炎にも気づかないし、梅毒菌の実験中に手に切り傷ができていても気づかない。怒ると体から静電気を発する。
行動は非常にスローモーで喋り方も遅く、どんくさい。表情も乏しいし、言ってることもなぜそうなるのかわからないことも多い。
なんというか、大型恐竜みたいな人である。
雪に埋もれた菱沼さんを助けた男子高校生が、彼女のどんくささが心配になり、過剰に見守り活動をしているうちに好きになってしまうのだが、ストーカー扱いされたあげく、菱沼さんに無理矢理告白させられ、72年の札幌オリンピックには生まれていないという理由でふられてしまう。ふるくらいなら告白させないであげてほしいと思うが、彼女に悪気があったわけではなく、恐竜が歩いているときに小動物を踏みつぶしても気づかないようなもので仕方がないのである。
