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斎藤幸平インタビュー今やりたいことを我慢して投資に回す資本主義社会の不幸

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斎藤 私はしていなくて。現実問題としてはしたほうがいいかなとは思うんだけど、でも妻の投資を見ていると「なんにもしないで何十万もお金が増えるなんて、そんなふざけたことがあっていいのか!?」と(笑)。みんなが平等に儲かるなら別だけど、投資は絶対に金持ちが有利だし、投資に回せる金がある人が儲かって、そうじゃない人は置いていかれるという構造のあり方は絶対に健全じゃない。それに「将来に備えて」というけれど、一回きりの人生で、その時にしかできない経験を殺して生きていくなんて、めちゃくちゃ寂しいよね。1000円のランチを我慢して、500円のおにぎりにして、残った500円を投資に回そうか、なんて考えなきゃいけない人生を強いる社会なんてのは、全然豊かな社会じゃないし、資本主義は最終的に自分たちを幸せにしてくれないのではないか、ということを問題にするのが社会主義なのです。

生活水準を落とすのは必須

――『黙示録』では、僕の解釈になりますが、「これまでの便利でモノに溢れた生活は成り立たないし、世界は終末に向かっているという現実を見つめて、過剰な消費や大量生産のライフスタイルを手放し、コモンを分け合って生き延びるしかない」という「暗黒社会主義」というテーマを立てられていますが、これはかなりショッキングな言葉ですね。全体的にもトーンが『資本論』よりも強くなっているようにも思いました。

斎藤 『資本論』から『黙示録』までの5年で、状況はかなり悪くなってしまったし、10年後、20年後にはもっと悪化するのが確定的な状態です。科学的なデータでいうと、人間社会を持続可能にするには、具体的には1980年代ぐらいまでは生活水準を落とす必要がある。少なくとも、2020年以前のような社会にはもう戻らないだろうなと。そういう時代に突入していく中で、我々はどう生きるか、破局を覚悟して準備していくかがテーマなので、危機感を強める風にはなってますね。そういう警鐘を深刻に受け止めてくれる人が1人でも増えてくれればいいなと。

――それぐらい危ない状況にあると。

斎藤 いや、本当にやばいですよ。気候変動の急速な悪化はもちろん、それによる食糧不足や資源争い、新しいパンデミックが起こる可能性はかなり高い。それでも、いまのような格差社会だと、金持ちはのうのうと生きていけるんですよ。でも、普通の人たちの生活はどんどん悪くなり、その不安が移民排斥のような社会の分断を生む。

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――どうすればいいですか?

斎藤 一つには「コモン」と言われる社会インフラを、市場に任せるんじゃなく、無償化するような動きを作っていく。もう一つはエネルギーや食料を、マクロな次元での自立、国家として自立するために、国家がある種の計画経済をして、食料自給率を上げる施策をしていく。資本主義の市場メカニズムに任せるだけなら、米作りや農業なんて結局儲からないし、誰もやらないですから。だから、そういう社会構造の転換が必要だと思うんですよね。

――それが「等しく貧しくなろう」というバラモン左翼とは違うことが、『黙示録』を読むとよく分かるのですが、勘違いする人もいると思います。

斎藤 箕輪さんが、僕がマルジェラを着てることをからかったりしてるけど、僕は「脱成長だからブランド品を着るな」なんてことは、一度も言ってないし、むしろ一着を大切にしないファストファッションや(大量生産の)ファストフードのほうが害があると思っている。ひたすら消費を続ける、そのために金を稼ぐというサイクルを批判してるわけで、良識的な範囲の中で好きなものを買ったり、食べたりする自由はあっていいと思ってますよ。その意味では「脱成長」というイメージそのものを変えたいと思ってるんですけどね。高市政権も含めて、日本で人気があるのが『ジャパン・アズ・ナンバーワン』の時代のような、強い日本を取り戻して成長していきたいというビジョンですが。

――バブル回帰というか。

斎藤 それは絶対に無理なんですよ。これから円安になって物資も入ってこないし、人口も減って、地球環境も劣化していく中で、成長したくてもできないようになる。「脱成長」どころか、そういう苦しい状況を「どう生き延びるか」というステージに入っているんですよ。そこで「だからもっと強くならないといけない」という発想では、ファシズムに飲み込まれていく危険性がある。だからこそ、言説とか運動を作っていかないといけないと思うんですよね。

左派の主張やデモは意味がある

――ただ、有明で行われた憲法集会に対して、大空こうき議員が国土交通省へ「確認」を入れたり、それに対するSNSでの賛同など、運動への締め付けや忌避感は以前よりも高まっているように感じます。

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