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花粉症患者が今年もバカの一つ覚えで大騒ぎ

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「スギを全部伐採しろ」という主張

たしかに、花粉症の原因はスギがまき散らす花粉だ。

花粉症の患者数は国民の3人に1人といわれるが、ここまで増えた背景にはさまざまな理由がある。生活全般におけるストレスの増大、生活環境が過度に衛生的になり、人間の体内にいた寄生虫や雑菌が減少したことによるアレルギー反応の過敏化、肉や卵の摂りすぎによる抗体の増加、さらに、ディーゼル車が垂れ流す排気ガスなどがそれだ。

とはいえ、これらはあくまで花粉症が発症するまでのプロセスの話であり、花粉症を引き起こす直接の原因はやはりスギ花粉そのものにある。

スギ花粉によるアレルギー症状が東京医科歯科大学の医師によって「スギ花粉症」と名づけられたのは1963年のことだ。その後、76年から花粉が激増し、79年には大飛散によって花粉症が社会問題にまでなった。

この時期に花粉症が激増したのは、木材需要の高まりを受けて、国が関東地方の山間部を中心にスギやヒノキなど生育の早い針葉樹を大量に植林する「拡大造林」という政策を50年代に打ち出したからだ。スギは樹齢20年目から花粉をつけ始め、30年目以降に花粉のピークを迎える。そのため、植林から30年が経過した70年代終わりから80年代にかけて、スギがいっせいに花粉を飛ばし始めたのだ。

そこに輪をかけたのが64年の木材輸入の自由化だった。この規制緩和によって価格の安い海外の木材が入ってくるようになると、国産のスギは価格競争で勝負にならない。せっかく植林したにもかかわらず、この大量のスギに木材としての需要が激減してしまったのだ。

このため、木材としてのスギの価値が下落し、55年に95%あった日本の木材自給率は、70年には45%に急降下した。その後、80年には30%、00年以降は20%を割り込んでいる。スギの価格も、昔は1本4800円だったが、いまや2000円以下に下落している。

かくして、伐採されないまま放置されたスギが植林から30年以上を経過した開花適齢期を迎えて、花粉を大量にまき散らすようになったのだ。

しかも、木材として伐採しないにもかかわらず、国は補助金をつけて現在も毎年1600万本のスギの苗木を植えている。30年後には、このスギが新たに花粉をまき散らし始める。

そのうえ、花粉症にかかる薬や治療などの医療費は年間3000億円を超えるが、林業の木材生産額は2000億円でしかなく、スギだけに限れば1000億円だ。

花粉症によって鼻水やくしゃみが止まらず、これ見よがしにつらそうな顔をする人たちからすれば、スギこそが諸悪の根源に思えるわけだ。

スギやヒノキは全然悪くない

しかし、花粉症患者は知らないようだが、スギの植林は木材不足だけが理由ではない。それ以外にも「治山」という大きな目的があったのだ。

この治山とは、地域の住民が安全・安心して暮らせるように、山地災害を防止し、土砂の流出などを防ぐことだ。

そもそも、日本の国土は急峻な地形のうえ、地質が脆弱で、昔から豪雨や台風、地震などによって山崩れや土石流が発生し、地域の住民に大きな被害をもたらしてきた。たとえば、日本の災害史上でも稀な大きな被害となった明治29年の大水害、そして、カスリーン台風や枕崎台風、阿久根台風など、昭和20年代に続発した大型台風……。昭和20年代の台風は関東地方に大きな被害をもたらし、年間数千人の死者・行方不明者を出した。

これらを通じて、その重要性があらためて確認されたのが治山である。そのため、明治以来、ハゲ山への植林や伐採規制など、住民が安全に暮らせるように、時代ごとにさまざまな法整備が行われた。

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