304回 なぜか戸塚宏がトレンドに?
最近、X(旧Twitter)のTLに戸塚ヨットスクールの話題がたびたび流れてくるようになり、「何で急に?」と思っていたのだが、校長である戸塚宏をフィーチャーしたYouTubeチャンネルが開設され、その宣伝のためのアカウントがX上で投稿を始めたことがきっかけだったようだ。
1976年に戸塚宏によって設立された戸塚ヨットスクールは当初は普通にヨットの技術を教えるスクールだったのだが、戸塚の指導が非行少年の更生や情緒障害等の治療に効果があると話題となったことで、それを目的として多くの青少年があずけられるようになり、そういった青少年の更生・治療を目的とした施設に方向が変わっていった。
当初、戸塚は教育界のカリスマとして持てはやされていたが、度重なる訓練生の死亡や行方不明が報道されるようになった。その後、暴力を伴う指導や体調不良を訴える訓練生の放置といった問題が明らかになり、戸塚及び複数のコーチが傷害致死罪・監禁致死罪で起訴され、戸塚には実刑判決が下った。これが戸塚ヨットスクール事件である。この事件では5人が死亡している。また、戸塚の裁判が最高裁判所で結審したのは2002年であり、起訴されてから19年もかかる長期裁判だった。
戸塚は2006年に出所したが、「体罰は教育」であるという持論は崩れず、ヨットスクールを再開。2006年から2012年の間3名の死亡者、1名の重傷者がでている。死亡者のうち2名及び重傷者は自殺、残りの一人に関しては自殺と事故の両面から捜査がされた。こういったことの影響もあったのか、現在は3歳~8歳までの年齢の児童だけを対象に活動しているという。
似非科学理論「脳幹論」
体罰の是非についての議論で持ち出されることが多い戸塚ヨットスクールであるが、事件で発覚した戸塚ヨットスクールでの指導は体罰ですらなく単なる暴力であり、体罰の是非以前の問題だ。
戸塚の支持者は非行少年や情緒障害児の更生に彼の指導は効果があり、500人がそれによって更生したと主張したりもするが、この数字は1982年に戸塚自身が主張したものでハッキリとしたデータがあるわけではない。
継続的な暴力にさらされると暴力から逃げるために相手の要求に逆らわなくなる、失敗すると暴力を受けるので必死にできるようになるということはある。