しかし、それによって生まれるのは自分の意志を持たない従順な人間であり、命令に忠実ないい兵隊を作るようなやり方でしかなく、端的にいえば洗脳でしかない。これを更生といえるのだろうか。
また、単に苦痛から逃れるために従ってみせているだけの人間には、そういった強制された環境から離れたら効果が維持されないこともある。体罰を伴う厳しい規律の学校に通い模範的に過ごしていた人間が、卒業とともに自由を得ると生活がめちゃくちゃ崩れるのはよくある話だ。自堕落に暮らしていた人間が刑務所などの施設に収容され、そこからでていったときはちゃんとしているがしばらくすると元にもどるという例もたびたび聞く。
そのことをきっかけに本質的に変わる人もいるだろうが、そちらの方が例外なのではないか。
無気力な人間に圧を加え続けることで、死にたくないがゆえに結果的に能動的に動くようになることもあるだろう。しかし、そういうふうに適応できない人間だっている。そういう人間は死んでしまうことだってある。
登校拒否、ひきこもりといった症状の原因がうつ病や発達障害であるような人を暴力で指導しても別に「治ったり」しないだろう。たとえ改善されたようにみえても、別の問題・症状が生じている可能性がある。
暴力にさらされて生活していた人間は自分も他人に暴力をふるうようになることが多いが、こういった問題はどうなのだろう。