大規模リストラ敢行の日産の今
「ネットやニュースなどで、よく日産役員のプライドとの言葉を目にしますが、そんないいものではありません。あれはプライドではなく、ただのエゴですよ!」
強い口調でこう話すのは、横浜の日産の本社で要職を任されていたものの、今春での退社を決意した大橋さん(仮名・57歳)だ。以前より話題になっていた「大規模リストラ」について早期退職を提案する立場だったが、会社の様々な要素を分析した結果、自らが退職する道を選んだという。
今回は日産社員として最後の仕事で忙しい大橋さんと、自動車業界と政治の内情に詳しく、有名通信会社を定年退職した吉野さん(仮名・ 61歳)のインタビューをもとに、無能企業・日産の悪あがきと、その最期を予想してみよう。
ホンダと日産の経営統合が突如として破談し、大きなニュースとなったのは2月上旬のこと。もし実現していれば、世界3位の巨大な自動車メーカーの枠組みができるはずだったため、破談の余波は業界のみならず、日本経済に大きな影響を及ぼしはじめている。
「世間的には日産の内田誠社長の横柄な態度から、『社員から総スカン』だとかの記事が多い印象ですが、実際の本社内での内田社長の評価はそんなに悪くないんです。たしかにリストラを敢行した直近では、800億円の赤字を出すほどに純利益を減らしましたが、トータルで見ればむしろ実績的にはプラスと判断する人が多いんです」(大橋氏)
ただ、内田社長が「どちらが上、どちらが下ではない」というホンダとの対等重視発言や「完全子会社になると自主性はどこまで守られるか、日産のポテンシャルを引き出せるのか」といった発言で炎上した件については、「社員が自ら盾となってまで守るには、内田社長はじめ日産役員たちは無価値すぎると思いました」と、大橋さん。
「そもそも現在のジリ貧となった経済規模の日本において、基幹産業とはいえ自動車メーカーが8社もあること自体が異常だと気づいたんです。時代についていけなくなった老衰企業は淘汰されるのは定石。残念ながら我が社にはその現実が見えていない、または見ようとしない者が多い。他業種からの中途採用である私自身が危機感を強く抱くようになり、退社を決意しました」(大橋氏)