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ジャニー喜多川氏の性加害問題~オタクはこういう時に何ができるのか~:ロマン優光連載236

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故・ジャニー喜多川氏の性加害に関する動きが、BBCのドキュメンタリー、文春の告発記事、元・ジャニーズJr.のカウアン・オカモト氏によって行われた日本外国特派員協会での記者会見と続き、注目を集めています。ジャニーズ事務所から出された声明はコンプライアンス等の言葉を散りばめながら、何も具体的な話がされていない、何も語ってないのと同じものでした。

カウアン氏に関して、SNS上では、ごく一部のジャニーズファン(ジャニーズファンの母数の多さから考えると、ごく一部といってもさしつかえないと思います)からのバッシングが目立ってます。

彼のジャニーズJr.時代からの素行の悪さ、最近のネット上の発言、ガーシーとの人脈など、批判的に指摘されても仕方ない部分は確かにありますし、被害者として他者の名前を勝手にあげたことも明確に問題です。しかし、それは彼が被害者であることとは関係がないんです。たとえ仮にカウアン氏の告発の目的が一部のジャニーズファンが主張しているような不純なものであったとしてもです。

彼がデビューのために自発的に喜多川氏の要求に応じていたという話をする人間も出ていますけど、それが事実であったとしても喜多川氏の行為が性加害であり、彼が被害者であることにはかわりませんよね。権力の勾配がそこにあり、そういう被害者側が自発的に奉仕を提供するように持っていく構造をつくっていたということでしかないし、その上、相手は未成年。自分が加害者であるという認識がなくても、被害者だと自覚していなくても、そこにあるのはそれでしかないんですよね。

合宿所に出入りしたメンバーはほぼ全員性加害にあっていたと思うという内容の発言に対して、喜多川氏とのことを黙っていたい人もいるし、それがなかった人まで疑いの目で見られるし、迷惑であるという意見も複数見ます。でも、黙らなければいけないことができたのは喜多川氏にそういうことをやられたからだし、疑いの目で見られるのも喜多川氏がそういうことをやって隠蔽することを繰り返してきた疑いがあるからですよね。本当に批難されるべきはそっちです。

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推しを守るためにできること

自分もアイドルオタクなので、推しを守りたい、推しのいる世界を壊されたくないという気持ちでたまらなくなるのはわかるんですよ。でも、どんな人間だったとしても告発者を叩いても何もならないんです。こういう時、世間の人は告発者の細かい瑕疵とかどうでもいいんですよ。本筋と実際は関係ないようなことで告発者を叩けば叩くほど、世間では「あそこのオタク」はおかしい、ああいうオタクに支持されているあそこはおかしいという話になってしまうだけだと思います。

この件でも、騒ぎに便乗してジャニーズのタレントやジャニオタ叩きをする人や女叩きをする人もいますけど、こういう時に自分たちの発言に向けられた批判は全部そういう「アンチ」からのものだとするのは違う話で、そこを切り分けて受け入れるべき話は受け入れていかないと、エコーチェンバーの中で世間の感覚から遊離していくだけなんです。

この件を呟いた人に、カウアン氏がいかに信用できない人物であるかという説明をするリプを片っ端から送りつけている人を見かけましたが、そんなことしても相手はドン引きするだけですし、一方でカウアン氏に対して好意的でない(といってもめちゃくちゃ叩いている人から、愚痴めいたものまで色々です)ツイートをしている人にその内容のレベルを問わず、高圧的で攻撃的でめちゃくちゃな論理のリプを片っ端から送ってる人もいて、本当にひどかったです。どちらも他人の感情を悪化させるだけですよね。

ジャニー喜多川氏の性加害の問題って現運営がちゃんと事実を明らかにして、今後の方針を明確にし、何年もかかって行動で証明していくしかないんだと思います。しかし、喜多川氏が故人であること、長年に渡っていること、性加害が事実なら被害者の多くが当時未成年であったこと、被害者の現在のプライバシーなどの問題があり、完全に透明化することはないと思うんです。

そういう説明できない部分で憶測が生まれたり、意図的にゲスな話をして貶めようとしたり、話せる範囲で真実を語っても信用しようとせず悪意で解釈する人も出てくるだろうし、それはきっと続くのだと思います。

この件に関してはタレントは基本的に事務所の被害者でしかないですし、タレントを叩く人はその人がおかしいんですよ。この件でタレントを侮辱する人が出てきても、推しが悪いのではもちろんなく、告発者が悪いのでもなく、悪いのはそいつと事態を悪化させてきた運営なんですから。

運営に問題があった場合、結局、オタクにできることは、SNSで論戦したり、だれかをバッシッングすることではなくて、運営に抗議しながらも、推し個人のファンで居続けることだけなんだと思います。何があっても活動を継続できるように普通にファンでいることが大切なことなのでは。大半の人は苦しみながらも、それがわかっているのではないかと思います。

しかし、運営に問題がある場合は素直に推しに寄り添えばいいんですけど、推し自体がやらかしたり、推しが運営も兼ねてやらかしてると、単に肯定して寄り添うというわけにもいかず、本当にツラいんですよね。いつまで自分はその人のオタクでいれるのか、色々悩ましいものです。

〈隔週金曜連載〉
画像/Johnny’s Entertainment Record公式HPトップページより

PROFILE:
ロマン優光(ろまんゆうこう)
ロマンポルシェ。のディレイ担当。「プンクボイ」名義で、ハードコア活動も行っており、『蠅の王、ソドムの市、その他全て』(Less Than TV)が絶賛発売中。代表的な著書として、『日本人の99.9%はバカ』『間違ったサブカルで「マウンティング」してくるすべてのクズどもに』(コアマガジン刊)『音楽家残酷物語』(ひよこ書房刊)などがある。
twitter:@punkuboizz

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