モーニング娘。’23の最新アルバム『モーニング娘。ベストセレクション ~The 25周年~』が8月30日に発売された。
2枚組アルバムで(初回生産限定盤にはさらにBlu-rayが付く)、1枚目の後半3曲と2枚目全曲が現メンバーでの再録。1枚目にアルバム未収録と新曲が計10曲もあり、ベストアルバムにしなくても、オリジナルアルバムとして出せるくらい曲は揃ってるわけですが、それではイマイチという上の判断だったのでしょう。
また、今年の秋ツアーファイナル公演にリーダー譜久村聖の卒業が控えてます。譜久村と言えば、歌割りの数がモーニング娘。(ないしはハロプロ)トップ。そんな彼女が卒業したら、その大量の歌割りを現メンバーに振り分けなければなりません。そのチェックのためにも、定番曲を改めてレコーディングし直したのだろうと思われます。
新曲は3曲。今のモーニング娘。は新曲のリリースをかなり絞ってるので(ほぼ年1枚ペース。去年はシングルイヤーで2枚)、アルバム曲と言えど貴重です。
そのうち、『なんざんしょ そうざんしょ』『悲しくなるようなRainy day』は初期のモーニング娘。がやりそうな歌謡曲テイスト。特に『なんざんしょ そうざんしょ』はファンにもかねがね好評のようです。テンポが速くて楽しい曲です。
『悲しくなるようなRainy day』はド直球バラードではありますが、近年のモーニング娘。では珍しすぎて逆に聞き応えがあります。
まるで卒業ソングのよう
もう1曲が『HEAVY GATE』。アルバムのトップバッターだし、YouTubeでライブ映像を編集した動画が公開されているし、推されている感のある曲です。
この前の武道館公演が初披露だったのですが、こう思ったひとは少なくないはず。
「譜久村の愚痴垢へのアンサーじゃないか!」
愚痴垢とは、匿名でアイドルを叩くツイッター(現:X)のアカウントのことです。本人にエゴサで見られないように、「譜久村」は「fkmr」、「羽賀」は「hg」と、かすかながら配慮はしている模様。
この愚痴垢によって、譜久村は昨年たびたび炎上しました。主な理由としては、佐藤→森戸→加賀と人気メンの卒業が相次いだのに、なぜ最年長の譜久村が居残っているのかということ。譜久村は今年で27歳。それプラス、リーダー歴が道重を超えて最長。さらには、歌割りが譜久村に集中していることも炎上の要因に(ハロプロの中でも一番多い)。目立つと叩かれるのは世の常です。譜久村と同期の生田衣梨奈は歌割りが皆無のためか、さほど叩かれてません。あと譜久村は、失言が多いことでも叩かれていました。
歌詞について詳しく説明していきます。タイトルの『HEAVY GATE』は日本語訳すると「重い扉」。つんく♂のセルフライナーノーツによると、複雑なものを持った主人公だとか。「周りのみんなにも『笑ってね』『優しい人だね』『叱ってね』って言ってて、でも、自分がちゃんと出来てない」ともあり、後輩を指導する立場の人物を指しているのだろうと察することができます。
サビは「ようやく行く 私行く」「未来が待つ そこに行く」。いかにも卒業ソングですが、「ようやく」という言葉に、重い腰をやっと上げるというニュアンスが込められています。時間が経ち過ぎとも。あんまり自分に対して、使わない言葉ですよね。この辺は、つんく♂の歌詞の妙であります。
「この場所好きよ」のくだりは、今いる場所が楽ちんで笑えて、みんなも大好きといった歌詞。譜久村目線のモーニング娘。としか思えません。そして鬱憤を歌った後に、「全部わかってる しないのは私ね」。色々と前向きなことを後輩に教えてきたけど、ずっと同じ場所に留まり続けているのは自分なのではないか。そういうメッセージが伝わってきます。
「ようやく」とか「全部わかってる」とか、どことなく皮肉なニュアンスが込められているのは、愚痴垢を通過したうえで固まった考えだからかなと思ったり。
「Get down!」に隠された意味
もし譜久村についての曲なら、たびたび現れる「Get down!」は「降りといで」の意味だから、有名なセリフ「譜久村、降りといで!」から取っているはず。「譜久村、降りといで!」とは、2011年1月2日の中野サンプラザにて、当時エッグ(研修生)だった譜久村に、つんく♂が放ったセリフです(「降りといで!」とは変な言葉ですが、これは雛壇の上のほうに譜久村が座っていたから)。
そう考えると、「孤独ガリータ」は「孤独がりだ」の言い換えですが、これは「みずき、悪くないもん!」のこと? ファンがよく引用する言葉で、ビートたけし「ダンカン馬鹿野郎」と同様におそらく本人は言ってませんが、いかにも譜久村が言いそうなセリフではあります。
「みずき、悪くないもん!」→「孤独がりだ」→「孤独ガリータ」といったとこでしょう。
そんなわけで、いかにも譜久村の卒業ソングにぴったりな曲。シングルではなくアルバム曲になったということは、完成したら微妙だったってことですかね。つんく♂のセルフライナーノーツを読んでも、「サウンドは体で感じてください」と適当。「まだまだ改良もされてくだろうし」とも書いてるし、あんまり気に入ってないのは伝わります。
曲調のほうは、いわゆるEDM。
最近のモーニング娘。の曲にEDM感はなかったから、あえて戻したとか? フクムラミズ期(羽賀朱音の命名。アンチが皮肉でつけたわけではない)を象徴するEDM調にしたのは、意図的なものを感じます。長年EDMに固執しすぎて、モーニング娘。の人気が急落した的な。
相変わらず、色々と考えさせられるモーニング娘。=つんく♂ワールド。できれば、新曲を出すペースを上げてほしいです!
文/秋ゲルゲ康