また、ジャニーズ陰謀論といってさしつかえない発言をしているX(旧Twitter)アカウントがNGT陰謀論のまとめを貼った投稿をして、48グループのファンに共闘を訴えていた。これは、ジャニーズ問題を取り上げてきた週刊文春の記者(90年代の裁判になった記事にも関わっている)がNGT事件も取り上げているからだと思われる。ジャニーズ陰謀論においては彼は謀略側の構成員であるかのようにみなされているが、NGT陰謀論においても被害者を攻撃している謀略側の人間とされていて、そこが重大な接点になったのだろう。陰謀論が他の陰謀論によって補強されるわかりやすい例であり、このように陰謀論は他の陰謀論と連結される。
こういったタレントに関わる陰謀論が紡ぐ「物語」は、関心を持つ者も少ない小さな「物語」にすぎず、それ自体が世界に影響を与えるようなことはない。ただ、他の陰謀論と連結されていくうちに、より悪質な大きな「物語」の中に統合されたり、小さな「物語」の支持者が大きな「物語」の支持者になる可能性はあり、侮っていていいものではない。
タレントに何かあったときに陰謀論を持ち込んでくるようなファン以外の人というのは、ビジネスに誘導するためとか、自分という人間の正しさを世間に証明する機会をうかがっているとか、世界の本当の形を知りたいとか、自分のためにやっているだけなので、対象になっているタレントのことなど本当はどうでもいいわけだ。擁護してくれる、事態を否定するような答えをくれるかのように感じて、その発言を支持したところで、それが陰謀論にすぎないものであれば世間が受け入れることもないし、かえってタレントのイメージが損なわれる事態になりかねない。そうなっても、陰謀論を持ち込んできた人間が責任をとってくれるわけではない。推しのためによかれと思ってやった活動で、自分の推しのイメージを損ない、足を引っ張っても意味がない。
そもそも単に自分が不快であるだけのことを勝手に推しも不快に思っていると主張したり、自分の求めるイメージと本人が違っていただけのことで裏切られたと怒ったり、推しの発言が自分の望むものでないと勝手に別の意味を読み取ったり、「あれは言わされてる」とかいう勝手な主張をするオタクというのはよくいるわけだが、推しが被るリスクを考えないファンによる無理矢理な擁護論というのも、推しの意思を無視したオタクの身勝手な降るまいの一つにすぎないのかもしれない。
〈金曜連載〉
PROFILE:
ロマン優光(ろまんゆうこう)
ロマンポルシェ。のディレイ担当。「プンクボイ」名義で、ハードコア活動も行っており、『蠅の王、ソドムの市、その他全て』(Less Than TV)が絶賛発売中。代表的な著書として、『日本人の99.9%はバカ』『間違ったサブカルで「マウンティング」してくるすべてのクズどもに』(コアマガジン刊)『音楽家残酷物語』(ひよこ書房刊)などがある。
twitter:@punkuboizz
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