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ネットの誹謗中傷はどこまで許される?:米山隆一連載3

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ネットの誹謗中傷で名誉毀損の裁判をするには弁護士費用だけで30万円程度かかるので、それ程訴訟が提起されないだけで、提起されたら上記の「クソ野郎」くらいでも十分賠償の対象になります。賠償の有無に関わらず、元より人を侮辱すべきではないのですが、近年の法改正で民事訴訟は提起しやすくなっており、皆さんSNSに書き込む時は肝に銘ずべきだと思います。

 刑事事件は、場合によっては人を刑務所に入れることなので、当然ながら民事よりもハードルが高いのですが、昨年最高刑が1年/30万円以下の罰金に厳罰化された侮辱罪について、法務省のHPに掲載されている処罰事例集を見ると、「SNSの被害者に関する配信動画で『BM、ブタ』などと放言したもの」が科料9000円に処せられており(厳罰化前)、これも思われているよりはハードルは低いと思います。こちらも刑罰の有無に関わらず、元より人にその様なことを言うべきではありませんが、皆さん心して頂ければと思います。

 一方で、刑法の名誉棄損罪には、第230条の2「公共の利害に関する場合の特例」として

①公共の利害に関し、公益目的で為された言論は、真実の証明があった時は罰しない
②公訴提起されていない犯罪行為に関する事実は、公共の利害に関する事実とみなす
③政治家、候補者、公務員に関する事実については、真実の証明があった時は罰しない

と定められ、この趣旨が民事訴訟においても考慮されるので、(a)政治家・公務員に対する(b)真実だと信じる相当な理由がある批判は、それが「クソ野郎」の様な人身攻撃に渡るものでない限り、中々名誉毀損が認定され、民事賠償を命じられたり刑事罰が科せられたりすることはありません。

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それ故、一応政治家の末席を汚している私なんぞも、「頭の悪い知事 人間性も最低(橋下徹氏TW)」と言われても、まあ訴訟に訴えずに我慢している訳です(但し「人間性も最低」は訴えたら数十万の賠償の対象になる可能性はあると思います)。

皆さん、SNSで発信する時は、それは独り言では全然なく、世界中の人が見ている公的言論で、結構低いハードルで民事賠償どころか刑事罰迄課せられることを心して頂き、批判するのであれば、公共目的で、事実に基づいて、(特に)政治家に、鋭い批判を浴びせて頂ければと思います。それが民主主義ですから。

 

文/米山隆一
写真/X、橋下徹氏アカウント(@hashimoto_lo)より
初出/実話BUNKA超タブー2023年9月号

米山隆一

PROFILE:
米山隆一(よねやま・りゅういち)
1967年生まれ。新潟県出身。東京大学医学部卒業。独立行政法人放射線医学総合研究所、ハーバード大学附属マサチューセッツ総合病院研究員、おおかた総合法律事務所代表弁護士などを経て、2016年10月に新潟県知事就任。2021年10月、衆議院議員選挙にて新潟5区で初当選。立憲民主党所属。
Twitter @RyuichiYoneyama

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