電子書籍には、再選当時の心境が綴られていた。
〈念願かなって、再び議員になった私に対し、町長の態度は冷たいものでした〉
その頃、町長への特別な感情はすでに沸々と芽生え始めていたのだ。新井の選挙ポスターには「女の執念」のキャッチコピー。町長はメディアの取材にこう喝破する。
「突然、テロに遭ったような感じです」
町長は地元新聞の折り込みに8章立ての反論書を挟み、徹底抗戦している。さらにメディアの取材に積極的に応じ、次のように捲し立てた。
「まったく根も葉もないこと。町長室には大きな窓があり、草津町交番や商工会館からも丸見え。私が町長になったときからカーテンは壊れており、ずっと閉めていません。そもそも私は危機管理として、女性が1人で訪問してきたときは、ドアを開けておきます!」
草津町において黒岩町長の人気は高い。
「あの人は中卒ですけど、バブル崩壊後、客足が激減していた草津温泉を人気観光地に押し上げた立役者なんですよ。草津町の宣伝マン。今まで女ったらしという評判はなかったし、彼には妻と娘がいますしね。一番可哀想なのは彼女たちですよ」(後援会関係者)
黒岩は中学卒業後、草津町議に当選し、10年に草津町長に就任。昨年3月には人気テレビ番組『カンブリア宮殿』(テレビ東京)にも出演している。
前出の後援会関係者が苦笑交じりにいう。
「あの女は、官能小説家になったほうがいいわ(笑)。町長が議会に町長室の特大写真パネルを持ち込んで『どこでその行為をしたのか』と指でさすよう迫ったところ、彼女は答えられなかったんですよ。そのくせ、『この部屋は、証拠隠滅のため模様替えしている』と言ってオタオタする始末。町長は、あの部屋の模様替えなんて1度もしていないんですよ」
ワイドショーの格好の餌食に
真っ向から食い違う両者の証言。降って湧いた温泉地の醜聞を下世話なワイドショー番組が見逃すわけがなかった。民放各局は、こぞって草津町に集結。あるテレビ局はスカート姿の新井を足湯に座らせ、下のアングルからカメラを舐めるように移動させ、エロ小説の朗読のように〝あの日の出来事〟を新井本人に語らせていた。
テレビ関係者が番組制作を振り返る。
「あの女の椿事を知ったとき、『これだ!』とガッツポーズしましたね。すぐに湯けむりの中で新井町議が涙ながらに告白している絵が頭に浮かび、『これは視聴率を取れる!』と。だって、あの外見の50代女性と地元の町長が『ヤッた、ヤッてない』で温泉街でモメてるんですよ。とてつもなく平和で馬鹿っぽい話じゃないですか(笑)」
注目が集まったのは新井の特異なキャラだったという。