1991年に『Blue』が東京都から不健全図書の指定を受け、版元回収となって以降も、一切怯むことなく過激な性表現を追求し続けてきた漫画家・山本直樹。コミック規制の中心部に立つ存在として知られている山本氏だが、ネット上などで「表現の自由戦士」と呼ばれる反表現規制論者たちへの態度は冷ややかでもある。氏の考える“表現の自由”と“性表現の有り様”とはいったい、どのようなものなのか――。【前半記事】
――『Blue』が不健全図書と指定された時のことは、とても印象深く覚えています。
山本直樹(以下、山本) 最初に東京都の不健全図書指定を受けたのは『Blue』です。次はちょっと飛んで、2008年に『堀田』の3巻。あと『分校の人たち』の2巻と3巻。20年に発売された最新刊の『田舎』もだから、『分校』の2巻目以降は『レッド』以外のすべての作品が不健全指定を受けてる。
――不健全指定を受けると、どういったことが起きるんですか。
山本 『Blue』は絶版回収廃棄だったけど、それって発禁ではないんです。最初の版元は光文社だったんだけど、「不健全指定を受けたら、回収するっていうのが、社の方針」って言われて。でも『Blue』は漫画として出来がよかったから、これは残るでしょうとは思っていた。実際、すぐに弓立社で成年指定マーク付きで出せたし。amazonから『田舎』の書影が消えたのも、それはamazonが東京都から指定を受けると、取り下げるっていうルールらしいし、結局重版もかかったし。だから、あまり辛い目にあってないんですよ、すみません。
――ご自身の作品が規制されることについて、どういうお気持ちですか?
山本 (性器を)白く塗られたり、黒く塗られたりするのは最初からそうだし。編集さんの判断でやる作業だから。『堀田』の3巻が指定を受けた時に見返したら「え! 全然塗られてないじゃん!」って思ったからね。『堀田』は編集さんの心意気のおかげでくらったっていう。エロ漫画なんて、規制と二人三脚でやるしかないんだよね。
――もちろん、生原稿では(性器が)すべて描かれてている?
山本 僕は全部描いてます。政治的使命のために描いてるわけではなく、描きたいから描いてる(笑)。