「表現の自由戦士」に思うこと
―――そういう闘い方で切り抜けるぞ、と。ところで、もともと表現規制に反対することって、反権力的なことだと思っていたのですが、昨今の表現の自由を叫ぶ人たちは、むしろ自民党を支持していることが多い印象です。そこについてはどうお考えですか。
山本 「表現の自由を狭めようとしている自民党にすり寄るんだ~」って気持ちですよね。でも、昔からいるんですよ。オタクの中でも一定数は、左翼的なものが大嫌いです。
――山田太郎さんは、表現の自由を守るということを打ち出して、自民党から出馬して参議院議員に当選しましたが、それについて何か思うことはありますか。
山本 僕、あんまり知らないんです。一度だけSF大会でお見掛けしたけど、特にお話もしてないし。自民党の憲法改正案が出たら、それに投票するんですか? とはお聞きしたいですね。
――『ラブひな』の漫画家・赤松健さん(今夏の参院選で反表現規制を掲げて当選)はいかがでしょうか。
山本 同じです。漫画も読んだことないんだよね(笑)。でもほら、最近、おっぱいの大きい可愛い女の子の絵を献血のポスターに使って叩かれたとかあったでしょう。「そりゃ叩きたい人はいるし、街角にそんな絵を貼らなくてもいいんじゃない?」と。家で楽しめばいい。
――表現の自由戦士たちの言い分からすると、そこを一歩譲ると、どんどん狭められていく。ゾーニングだけじゃ済まなくなる、という考えですよね。
山本 勝手に敵を作って勝手に戦っている印象しかないですよ。ようするに「左翼とフェミニストが、俺たちのエロを消そうとしている!」みたいな観念でしょ。
――そうです。一方、フェミニスト側の主張としては、世の中にある女性を性的に消費するようなコンテンツによって、実際の女性や子どもが危害を加えられていると。
山本 その因果関係はわからないけど、フィクションと現実をごっちゃにするなとしか。エロ漫画を読んで、エロい気持ちになって性犯罪にはしるってことをやった人がいたとしたら、その人は現実とフィクションを混同しているし、そういうのを捕まえて「お前、漫画のせいでやったんだろう」っていうのも、現実とフィクションを混同してる。どっちもバカばっかりってことになるよね。子どもの頃から溢れかえっている漫画を読んで育って大人になった人は、現実とフィクションが違うことくらいわかってるよね。それが普通の日本人じゃないですか。