あの時代はスマホもまだなかったから、友達と旅行に行った時なんかはもっぱらコンビニで実話系雑誌や実話系コミックを大量に買い漁り、旅先で暇な時間にみんなで読んでいた。そこに掲載されている芸能界のウラ情報や、アングラな話、アウトローの実録エピソードなんかにおおいに知的好奇心を搔き立てられて、「この話ってマジなのか?」、「このタレントにこんなスケベな一面が!」なんて友人どうしで朝まで語り合って、バカ騒ぎしたものだ。
以前オリラジのあっちゃんが松本人志に噛みついて物議を醸していたが、よくよく考えてみると、あっちゃんにとっての松本さんが僕にとっての久田さんなのかもしれない。相手の存在が偉大すぎると、立場が弱い人間は自己防衛本能が働いて、どうしても条件反射的に噛みついてしまう。
レジェンド編集者として久田さんはこれまでに数々のエピソードを残している。
キックボクシングを嗜んでおり、喧嘩が異常に強いと伝え聞く。さらには本格的なタトゥーも体に入れている。
僕も久田さんが作る出版文化に影響されていた学生時代、タトゥーを入れることへの強い憧憬を持っていた。ここだけの話、タトゥーショップに自ら足を運んで思い切ってタトゥーを入れようとチャレンジしたこともある。
でも、実際にお店で「こんなイラストでどうでしょうか?」と提案された時、「なんか違うな」、「ダサく思われないかな」と逡巡してしまい、結局は入れることができなかった。
しかし久田さんはそんなタトゥーを腕に彫ってある。
その時、ためらうことなくタトゥーを入れられる久田さんと、ビビってあきらめてしまった自分では根性や腹の据わり方がまったく違うんだっていうことを強く実感した。