ネット記事やSNS、テレビ、雑誌で「美味しい店」の情報は溢れている。もちろん実際は美味しい店などそうそうない。日本でも外国でも、本当に美味しい店を探すのは至難の業だ。
7回:本当に美味しい店などごくわずか
ここのところ疲れているので、温かい場所に行こうと思い、台湾に決めた。これまで台湾は何度も行っている(今年は5月にも行った)ので、観光地を回ることはあまりないが、気になるレストランはたくさんあるので、そこを回った。
なお「台湾ではなにを食べても美味しい」と言う人がよくいるが、もちろんそんなことはない。そんな天国みたいな国が地上に存在するわけはない。日本と同じように、本当に美味しい店はごくわずかであり、それを探すのは至難の業である。
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「ミシュランガイド」の類もあまりアテにならない。逆を考えてみればいい。たとえば私が通っている東京の鮨屋が、外国のグルメガイドで紹介されるとは思えない。ああいうところに掲載されるのは、外国人にもフレンドリーなホスピタリティーに溢れた店である。
余談だが、その東京の鮨屋の一番いいところは愛想のかけらもないところだ。だからカウンターでの会話を求めてやってくるような客もいない。その店には小上がりが一つあり、あるとき、若い父親と母親、幼稚園児の3人が座っていた。その幼稚園児が「すみましぇーん、いくら、くだしゃーい!」と叫ぶと、その鮨屋の主人は低い声でひとこと「ありません」と答えた。私は笑いそうになったが、同時にすごく美しいものを見たような気分になった。その主人は、お高くとまっているのではない。ないから「ない」と言ったまでである。
話を戻すと、台湾南部の高雄市で、ガイドブックによく載っている高級海鮮料理の蟳之屋に行ったが、ダメだった。イカは食べにくいし、ウチワエビはパサパサ。
勉強代だと思ってカネを払い、気持ちを切り替え、高雄市最大の観光夜市である六合夜市へ歩いて向かった。道の両脇には屋台がひしめいている。グルメガイドやネット情報に頼らず、自分の嗅覚で探そうと思い、まずはどんな店があるのか一通り確認した。なかなか美味しそうな麺の店があったので、入ってみたが、クソまずかった。残したら悪いとは思ったが、ほとんど残した。
ホテルに戻り、ネットで高雄のレストランを調べていると、そのクソまずい店を激賞している人がユーチューブにいた。