CANが後続のミュージシャンに与えた影響というのは大きく分けて二つあると思う。ひとつは音響と反復されるリズム。パンク、ポストパンク、オルタナティブ、アンビエントテクノ、エレクトロニカと、そういった部分で強く彼らの影響を受けたミュージシャンも多い。これらは楽器隊の演奏からくる影響である。
もうひとつは意図的な破綻の導入、不確定要素を投入することで産まれる異化作用といった部分である。非音楽的な要素の導入による音楽の活性化という面は、その理論的な部分の理解はさておき、単純に「カッコいい!」という面でパンク/ポストパンク期のバンドやその流れに連なるバンドに影響を与えたと思う。その「わけがわからないけどカッコいい!」部分を担っていたのがダモ鈴木である。
高度な理論と演奏能力に裏打ちされた音像を切り裂くかのように表れるダモ鈴木のボーカルは「歌が上手い」という価値観以外の評価軸を提示し、ジョン・ライドンやマーク・E・スミスをはじめとする多くのボーカリストに影響を与え、ロックバンドにおけるボーカル表現の豊かさを大幅に拡張した。
輸入盤屋にいつもあるCAN
自分がCANを実際に聴いたのは90年代、大学進学のために上京してからになる。
80年代半ば~後半、ようするに自分の中高校生時代だが、ロックの文献を漁ってCANの情報を蓄積したり、輸入盤屋でジャケットを確認したり、マーク・E・スミスの発言でダモ鈴木を意識したり、『FOOL’S MATE』誌のダモ鈴木インタビューでダモは森田拳次による漫画『丸出だめ夫』からきているという豆知識を得てはいたが、実際に聴くにはいたらなかった。
CANのアルバムは地元のレンタルCD屋には置いてないが、輸入盤屋にはいつもある。 そういうものだった。中高校生時代、乏しい小遣いの中からアルバム一枚買うのは一大決心が必要。そうなると、これを逃したら買えなさそうなものが優先されるし、レンタルで聴けるものがあればそれはそれで優先的に聴くことになる。簡単に聴けないけど、いつでも買おうと思ったら買えるものは買うのを後回しにしがちで、CANは絶妙にそのポイントに位置していた。そういうわけで、意識はしつつも聴きそびれてしまったのだ。