ただ、ここが重層的に意味を帯びてくる。そこに出てくる固有名詞にさして興味がない人には「なんかマニアックなのが好きなんだな」というぐらいのシーンだし、そこに何らかのこだわりがある人が見れば色々と考えてしまうシーンだ。そういったものが好きなことに共感してしまう人もいれば、そういったものが好きなこと自体をバカにする人にとっては絶好のイジりどころだ。そして好きなもの(あるいは好きなことにしているもの)に対して、そういう接し方しかできないことに「この子は絶対失敗する」と絶望的な気分になる自分のような人間もいる。
絹ちゃんが天竺鼠の単独ライブに向かう途中、ちょっと面識があるイケメン男性(別にその人に恋してるとかでもない)に偶然出会ってライブに行かずに二人で焼き肉を食べにいってしまうシーンもそうだ。趣味にさほど打ち込んでない人には「そういうこともあるよね」というシーンだ。天竺鼠が好きな人や何かの趣味に打ち込んでいる人にとっては「そんなことでわざわざチケットをとった単独ライブにいかないなんて信じられない」と思うシーンであり、天竺鼠をこころよく思ってない人、そのファンをこころよく思ってない人には「天竺鼠が好きなやつなんて、しょせんこんなやつ」というシーンでもある。
絹ちゃんがやっているblog『麺と女子大生』にしてもそうだ。「blog流行ってたもんね」以上の意味を見出ださない人もいるだろう。絹ちゃんの薄っぺらい自己承認欲求を、あざといような、何も考えてないようなblog名に見いだして痛さを感じる人もいるだろう。
序盤以降、ラーメンを全然食べる様子が見受けられないことに「おまえ、本当にラーメンが好きだったのかよ!」と憤懣を感じる人もいるかもしれない。