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『花束みたいな恋をした』を見て:ロマン優光連載200【2021年11月26日記事の再掲載】

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ガジェットとして採用されるものの絶妙さと、それに対する主役二人の接し方の微妙さによって、重層的に意味が生まれてきているわけだが、製作側の意図がどこまであるのかはわからない。すれ違いから終わってしまう恋愛を描いているわけで、二人の失敗や愚かしさを意図的に描いている部分も当然あるだろう。しかし、二人の趣味嗜好やそれにまつわる行動というものはあくまで背景であって、そこの部分にどこまで意味を持たせているかはわからない。絹ちゃんがラーメンを食べに行かなくなることに関していえば、物語上重要でないからラーメンを食べにいく描写がないだけかもしれないし、色々と模索していたが麦くんと出会うことによって余計なものがなくなったということかもしれないし、絹ちゃんという人間の本質的な軽薄さを表すためなのかもしれない。

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主役二人は非常に外見的に優れているわけだが、二人が出会うまで物語内でモテている様子がない。麦くんはあからさまにイケてない感じだし、絹ちゃんは彼氏が欲しくて色々と動いているのだけれど、うまくいかない。マニアックな趣味を共有できる人、わかりあえる人がいないからというのが設定上の理由だとは思う。しかし、実際のところ、さほどマニアックな趣味というわけでもないわけで、趣味が合う人に全く会わないとも思えないし、劇中の二人の趣味関係の言動が微妙なことから、「この二人、発言が浅すぎたりトンチンカンだったりするから、同じ趣味の人にも相手にされてないから今まで一人だったのかな?」という風にも見えてしまう人もいる。

また、二人の「○○が好き!」みたいな部分がわかりやすく描かれてるのに、その文化が好きな人だったら当然やるようなことや、それがやりたいなら当然やるだろう地味な積み重ねみたいなものが全然描かれていないのは、描いても別に面白くならないからかもしれないし、二人が上っ面だけだという表現かもしれない。

そういう多様な解釈をすることができる描写の積み重ねにより、話の本筋である恋愛や同棲生活における若者らしい計画性のなさからくる失敗が色々と違う風に見えてきて、人によって全然違う物語になってしまう。

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そういうのとは別に、仕事で病んだ麦くんが絹ちゃんに対して、それを言ったら何もかもおしまいだし、絹ちゃんを好きになった理由なんてなくなってしまうような最悪な暴言を吐いて以降の地獄の展開は誰の心にも何かしら響くものがあるとは思う。それとて、人によって違うように見えているのだろうけど。個人的には「一緒にいる理由が執着だけになり、それ以外にその相手である必然性も何もなくなり、相手に何もしてあげることが何もなくなったら互いのために離れるしかない」ということを改めて思い出させてもらった展開だった。

自分にとっては「少し打算的で浅はかだけど基本的には善良な若者の愚かで滑稽な哀しい恋愛の物語」だ。他人とは違う存在でありたいけど何も武器を持ってない二人が流れの中で勝手に啓示を見いだして運命を無理矢理感じていく序盤の流れは本当に不安になった。冒頭のシーン(時間軸的には二人の今ということになる)をはじめ、あの二人が年月を経ても特に成長したように感じられず、最後のシーンまで本当にひたすら哀しい笑えない物語だった。そして、そのどうにもならない感じが自分は好きなのだと思う。

あと、古川琴音さんがかわいかったです。

 

〈金曜連載〉
画像/「PERSONA #1(通常盤CD+スマプラ)」大森靖子

あのちゃんについて:ロマン優光連載145
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PROFILE:
ロマン優光(ろまんゆうこう)
ロマンポルシェ。のディレイ担当。「プンクボイ」名義で、ハードコア活動も行っており、『蠅の王、ソドムの市、その他全て』(Less Than TV)が絶賛発売中。代表的な著書として、『日本人の99.9%はバカ』『間違ったサブカルで「マウンティング」してくるすべてのクズどもに』(コアマガジン刊)『音楽家残酷物語』(ひよこ書房刊)などがある。
twitter:@punkuboizz

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