自分が推している（推してきた）アイドルは若い女性がほとんどだし、性加害の加害者になる可能性は低いと思うし、権力を持つような立場にもない。だから、彼女たちを襲った悲劇と同質なものに出会う可能性は多分低いだろうとは思う。それでも何があるかわからない。推しが詐欺の容疑者になったり、変なマルチまがいのビジネスに手をそめたり、スピって陰謀論を撒き散らしたりしないとは言い切れないのである。より現実的な話だとプレイヤー側から運営にも手を染めるようになり失敗して所属メンバーを苦しめるとか。
本人の失敗は気にならないけれど、被害者がいるようなことをやってしまうのはやっぱり違うから。
それがささいなことなら距離が空いていくぐらいだろうけど、問題の大きさによっては明確に決別しなければならないこともあるだろう。きっと嫌いにはなれないのだろうけど。
個性の強い出演者たち
作中、最も辛辣に罪を犯した推しを糾弾していたジュジュが最後に推しに向けた言葉が心に残る。どんなに好きな人でも、たとえ憎みきることもできなくても、行いによっては意思を持って決別しなければならない時もあるということを明確に認識させられる瞬間だった。
『成功したオタク』が罪を犯した推しに対して葛藤するオタクの姿を捉えているというだけではなく、生身の人間に対する推し活自体の構造的な問題を考えるきっかけにもなるし、ジャニー喜多川性加害問題や小山田圭吾オリンピック騒動の際の過剰な擁護・異常な擁護言説の問題と絡めて考えたり、日韓の人権意識の違いについて考えたりすることもできるだろう。視点によって、たとえば性差、ジャンルの違い、年齢の違いといった部分での色んな問題提起ができる映画だと思う。
