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韓国映画『成功したオタク』がスゴい:ロマン優光連載283

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オ・セヨンの推しは、女性に対する集団性的暴行、女性との性行為を違法に撮影して動画をチャットのグループで共有していた件で主犯格として実刑判決を受けたチョン・ジュニョンだった。

最愛の推しが女性に対する決して許せない行為の加害者として実刑判決を受ける。そんな過酷な状況の中で、自分が推しを推したこと自体が加害に加担したことになるのでは、自分もまた加害者なのではと悩むオ・セヨンは、同じような状況にいる他のオタクたちと会って話を聞くための「旅」にでる。推し活とは何かという答えを見つけるために。

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中学生のオ・セヨンが認知を得るために韓服で接触イベントに行ったり、推しに憧れて10万円のギターを買ったけどはしゃいで早々にネックを折ってしまったり、公式グッズがない頃に推しの画像をカラーコピーして手作りステッカーをつくって文房具に貼っていたというような無邪気なオタクらしいエピソードが披露され、その端から見ればバカバカしくも思える微笑ましい過去の行動と現在の状況とのギャップが何ともいえない。

V.Iファンで助監督のキム・タウンと推しのグッズを処分するために整理していたのに、いつのまにかグッズに関する自慢と楽しい想い出話に変わってしまっていることに気付き、許せないという怒りがありながら、ついつい推しのことを話してしまう自分たちに愕然としてしまうシーン。いかにもなオタクトークによって、オタクの悲しさと滑稽さが自然に浮かび上がってくる。

彼のやったことがどんなに許せなくても、今後彼のことを推していくことは無理だとしても、彼とすごした時間は自分という人間を形成する大事な要素になってしまっており切り離せない。切り離せないけど、彼を受け入れることは精神的にもうできない。それでも本当に大切な時間だった。それに気付いていく様子が自然と伝わってくる切ない場面だ。

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推しは時として間違う

登場するオタクの反応は様々だ。ストレートに怒りをぶつけ糾弾するもの。自嘲気味に自分をふりかえるもの。冷静に事態を見つめ直すもの。その多くは混乱して、自分の感情を整理しきれていないようにみえる。

オ・セヨン監督はユーモアを交えながらオタクたちの様子を映し出していく。「数多くの初めてに、その人がいた。初めて行った裁判所…までは必要なかった」という監督自身のナレーションはなかなか刺さるものがある。

オ・セヨンの親友・ソ・ジェウォンの「推し活にお金を使うならチキンを一羽分買う。アルバムと同じ値段だから」という言葉も身も蓋もなくて笑ってしまうけれど、本当に切ない。

息苦しいテーマの中、こういったオタク自身によるユーモアが救いになっている。

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