人権派格闘技漫画の最高峰『テコンダー朴』を世に送り出した義士・白正男先生が、日本人に正しい歴史認識と人権思想を啓蒙すべく、筆を執っている本連載。ジャーナリスト青木理氏がユーチューブ番組で日本人を「劣等民族」と言い、批判を浴びた。人権派義士として、白先生は青木氏の発言をどう思うのか。
第23回:同じ抗日革命戦士として「劣等民族」発言の青木理氏に思うこと
共同通信社の元記者でTBS『サンデーモーニング』のコメンテーターを務めるジャーナリストの青木理氏の「劣等民族」発言が物議を醸している。
青木氏は9月12日に配信されたユーチューブ番組『ポリタスTV』に出演し、「ネットランナー」の元ライターでネトラン厨のカリスマとして知られるジャーナリストの津田大介氏と対談。津田氏に「人々はなぜ自民党に投票し続けるのか」と問われた青木氏は「劣等民族だから」と発言。2人はそろってアハハハと笑い声を上げた。この「劣等民族」発言がSNSなどで拡散されて瞬く間に炎上。
思想的立ち位置が近いはずの野党議員からも「極めて差別的だ」などと批判された。「劣等民族」はナチスのユダヤ人迫害でも使われた差別用語であり、軽々しく口にするのは感心しない。サイモン・ウィーゼンタール・センターにご注進待ったなしの問題発言といわざるを得ない。いきなり差別かよ? リベラルッパリらしいな。
青木氏は9月27日に配信された同番組に再度出演し、自民党に投票する人を「劣等民族」だと発言したことについて、「たとえ軽口とはいえ、極めて不適切だったと思っています。それについて謝罪して、撤回をさせていただきます」と謝罪。けじめとして当面は地上波テレビ番組の出演を自粛すると語った。
津田氏は「劣等民族」発言について「不適切だったと認識しています」「その不適切な発言に対して自分も笑って流してしまいました」と反省の弁を述べ、「適切に反応できなかったことに対しても謝罪致します」と頭を下げて謝罪。
今回の件とは関係ないが、津田氏にはネトラン厨を大量発生させた道義的責任について謝罪する気があるのか聞いてみたい。ネトラン厨が生み出したとされる「購入厨」とかいうパワーワードを初めて聞いた時の衝撃は、今でもよく覚えている。ネトラン全盛期の2000年代、PCソフトや音楽CDを買った人が、ネトラン厨(割れ厨)から「購入厨」と嘲笑される狂った時代があった。ネトラン厨は謝罪しろ!
インテリだけでは革命はできない
インテリ左翼にとって自民党に投票し続ける愚かな大衆は唾棄すべき存在なのだろう。自分たちの崇高なリベラル思想を理解しようとせず、笛吹けども一向に踊らない愚民どもに苛立ちを感じるのかもしれない。しかしインテリだけでは革命はできない。革命の主体たりえるのは底辺の労働者階級である。自分たちになびかない大衆を「劣等民族」と切り捨てるのはいかがなものだろうか。自分は同じ抗日革命戦士として、青木氏に猛省を促したい。
日本では日本人はマジョリティだから、日本人を「劣等民族」と呼んでも問題ないという意見もあるようだ。2016年に施行されたいわゆる「ヘイトスピーチ規制法」の正式名称は「本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取組の推進に関する法律」。ヘイトスピーチは本邦外出身者、つまり外国人に対する差別的言動に限定されるのだ。例えば在日コリアンが日本人に「チョッパリは劣等民族」と言ってもそれは単なる罵倒に過ぎないが、日本人が在日コリアンに「朝鮮人は劣等民族」と言ったらそれはヘイトスピーチ。悔しいだろうが仕方ないんだ。劣等民族チョッパリは謝罪しろ!
文/白正男
写真/『青木理の抵抗の目線』(著:青木理/刊:トランスビュー)
初出/実話BUNKAタブー2024年12月号
PROFILE:
白正男(はく・まさお)
職業:義士、漫画原作者。出身成分:核心階層(抗日戦士)。正しい歴史認識と人権思想を啓蒙するため、本誌連載作品『テコンダー朴』の原作を担当。
X:@hakubaek31、@taekwondo5000