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弁護士目線で見た松本人志氏の訴訟:米山隆一連載6

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たとえ勝訴しても請求額と認容額に開きがあることで生じるリスク

勿論、そもそも本当に証言が真実ではなかったり、弁護士が辣腕で、尋問で証言が崩されたりして、「真実相当性は認められない」と認定され、首尾よく名誉毀損が認められる可能性もあるのですが、その場合でも、名誉棄損訴訟の認容額の最高額は清原和博選手の名誉毀損訴訟における1000万円で(2001年3月27日東京地裁判決。但しその後高裁で600万円に減額)、近年高額化の傾向はあるものの、平均的には著名人でも100万円程度です。裁判官は判例には縛られますから、この金額を大きく超えるような判決は考えづらく、認められても請求額の5億5000万からはかなり低い額になるのではないかと思います。

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そうなると、例えば仮に100万円の請求が認められて勝訴したとしても(通常の名誉毀損なら完勝と言っていい金額です)、印象としては「5億5000万円の請求のうち100万円(0.18%)しか認められなかったんだ…。99.82%は悪いことしていたんだ…」と思われかねません。正直世間の度肝を抜くこの5億5000万円の高額請求もまた、余り上策とは思えません。

結局今回の松本人志氏訴訟は、そもそもの提訴でも、訴額でも、それ以前の発信・発言でも、上策とは言い難い対応を繰り返していると言わざるを得ないのですが、松本氏ほどの立場で、そういう総合的な助言をしてくれる弁護士やアドバイザーがそばに居なかったり雇えなかったりしたとは思えません。恐らくは松本氏自身の、「自分的美学において格好いいと思う姿(「マッチョな松本人志」)を世間に見せ続けたい」という意思に基づいてなされたものでしょう。そのマッチョ願望の結果が最終的にどうなるのか、注目されます。

 

文/米山隆一
初出/実話BUNKA超タブー2024年3月号

米山隆一

PROFILE:
米山隆一(よねやま・りゅういち)
1967年生まれ。新潟県出身。東京大学医学部卒業。独立行政法人放射線医学総合研究所、ハーバード大学附属マサチューセッツ総合病院研究員、おおかた総合法律事務所代表弁護士などを経て、2016年10月に新潟県知事就任。2021年10月、衆議院議員選挙にて新潟5区で初当選。立憲民主党所属。
Twitter @RyuichiYoneyama

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