政商で成り上がった渋沢と竹中
政商とは、政府と結びついて巨万の富を築いた明治初期の特権的商人のことです。
日本に資本主義が生まれた幕末から明治にかけての維新期には、三井財閥の三野村利左衛門や三菱財閥の岩崎弥太郎など、のちに一大コンツェルンを築き上げる商人が新政府の便宜によって大儲けしました。あれが典型的な政商です。
しかし、政商が明治初期にしか存在しなかったかといえばけっしてそんなことはなく、現代にも政治家とベッタベタに癒着して儲ける利権屋の商人は少なくありません。その筆頭がほかでもない竹中平蔵です。竹中平蔵は表向き経済学者を名乗っていますが、それは形式的な肩書にすぎず、その本業は明治初期の特権的商人そのものです。
たとえば、竹中は小泉政権時代に経済財政担当大臣として派遣労働の規制を全面的に撤廃し、格差社会を招いたことで有名ですが、それによってボロ儲けした人材派遣大手のパソナグループの会長に収まっています。同じく竹中がスキームをつくった郵政改革で「かんぽの宿」を格安で手に入れて大儲けしたオリックスも、その後竹中を社外取締役として手厚く迎え入れています。
さらに、竹中は小泉政権時代に密接な関係になった菅首相にも東京五輪からコロナ対策まであらゆる分野でアドバイスを行っているんですが、その結果、持続化給付金の事務手続き業務をパソナが受注し、東京五輪の競技会場や選手村といった大会の運営業務もほぼパソナ1社に委託されることになったわけです。ちなみに、防衛省が運営するワクチン接種センターの予約システムを手がけた企業の経営顧問も竹中です。
つまり、竹中の提言で政府が何かの政策を打ち出すと、その先には必ず竹中が深く関係する企業の利益があるんですよ。国策に最初から密接に関わり、その国の事業によって自分の懐に大金が転がり込む仕組みです。
そして、こうした我田引水そのものといえる薄汚い商売のやり方は渋沢栄一もまったく同じなんです。
知っている人も多いと思いますが、渋沢栄一はその生涯で、東京海上火災、王子製紙、東京ガス、清水建設、帝国ホテルなど、500社あまりの企業の創業に関わっています。古河、大倉、浅野と、こうした新興企業グループも渋沢が世に送り出したものでした。 三井家や岩崎家の財閥と違い、渋沢栄一は息のかかった企業に自分の子どもを送り込んで支配したわけではありませんが、これらの企業群はほとんど「渋沢財閥」といえるものです。