政府補助金の裏にアメリカの影
台湾の誇る世界最大の半導体製造メーカー「TSMC」の工場誘致に成功した熊本県菊陽町が、今バブルに湧いています。
同様に北海道の千歳市でも、ソニーやトヨタなど国内大手企業8社の出資で設立された「ラピダス」が次世代半導体の量産化を目指すとして工場を建設中。こちらはアメリカのIBMやベルギーの半導体研究機関「アイメック」などと連携しているそう。
そんな菊陽町と千歳市のどちらにも共通しているのが、日本政府から大金が出ていること。TSMCには最大で1.2兆円あまりが補助されることになっていますし、ラピダスには2024年だけで5900億円が支給されるそう。まさに大盤振る舞いです。
かつて世界シェア7割を誇るも今は見る影もない日本の半導体産業もこれで復活か、といったところですが、そんなにポジティブな話ばかりではありません。この日本政府の動きの裏にはアメリカがいます。
そもそも日本の半導体の凋落はアメリカの思惑の結果です。1986年、日本はアメリカに強制され「日米半導体協定」を締結。日米の貿易摩擦を軽減する名目で「日本の半導体市場における外国製のシェアを20%以上にすること。日本の半導体メーカーによるダンピングの防止」が謳われていました。結果、それまで世界シェア1位だったNECが失速、米インテルが1位に躍進します。世界2位と3位だった日立も東芝も半導体業界では現在、まったく存在感がありません。
このようにせっかく完膚なきまでに叩き潰した日本の半導体産業の復活を、なぜアメリカが容認する気になったのでしょうか。
それは間違いなく近い将来訪れるであろう「台湾有事」に対する備えです。
台湾は中国にすんなり合併される
現在、世界の半導体生産の8割を担う台湾。仮にこの台湾が中国に併合されてしまえば、半導体は完全に中国に抑えられてしまいます。
現在の半導体は戦略物資なので、さすがのアメリカもそんな事態だけは避けたいところ。そこで渋々、半導体に対する日本の投資を許したわけです。背に腹は代えられないのでしょう。