アメリカの社会学者ジョージ・リッツアは『マクドナルド化する社会』で、徹底した合理化が非人間的な社会を生み出す構造を描いている。「マクドナルド化」とは、ファーストフード・レストランの諸原理が、料理だけでなく、世界のあらゆる分野を侵食することだ。
そこにあるのは、計算可能性、予測可能性、「人間技能の人間によらない技術体系への置き換えという制御」といった諸概念である。こうして、あらゆる価値はたとえばカネというひとつの尺度で測られるようになる。
人間による人間の管理は非効率的だが、人間によらない技術体系による制御は簡単だ。よって資本はそれを選択する。リッツアはナチスのホロコーストを近代的な社会工学の一つの事例とみなした。その背後にあるのは、人間の数値化という非人間的技術体系である。
大阪ではマクドナルド化した政治集団を中心にナチスばりの大衆運動が発生した。連中が一貫して芸術・芸能を攻撃してきたのは、こうした思想的背景がある。
画像/flickrより(撮影/MiNe)
初出/実話BUNKAタブー2024年8月号
【プロフィール】
適菜収(てきな・おさむ)
1975年山梨県生まれ。作家。大衆社会論から政治論まで幅広く執筆活動を展開。『日本をダメにした新B層の研究』(K Kベストセラーズ)『ニッポンを蝕む全体主義』(祥伝社新書)など著書多数。
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PROFILE:
適菜収(てきな・おさむ)
1975年山梨県生まれ。作家。大衆社会論から政治論まで幅広く執筆活動を展開。『日本をダメにした新B層の研究』(K Kベストセラーズ)『ニッポンを蝕む全体主義』(祥伝社新書)など著書多数。