特にクラッシュの二人、長与役の唐田えりか、飛鳥役の剛力彩芽がいい。不遇な時期を過ごしてきた二人だから、それぞれのキャラクターにダブって見える部分もあり、余計によく思えたのかもしれない。松永兄弟役の村上淳、黒田大輔、斎藤工の三人も素晴らしい。「松永兄弟って、結局いい人なんですか?」ということをプロレスを全く知らない知人から聞かれたのだが、でたらめで本当にひどいのだけど憎めないところがあるのが松永家の人々であって、その感じがすごく出ていた。実際の人物を知らなくても、彼らの演技によって生み出された人物像は魅力的なはずだ。
ドラマ、映画などの役者が演じるプロレスシーンは陳腐なものになることも多いのだが、この作品ではまるで本物のプロレスの試合をみているような気にさせられる。ちゃんとプロレスができているのである。
豊富な予算により日本のテレビ局では考えられないぐらいの準備期間がNetflixでは設けられることで、肉体作りとプロレスの練習に取り組めたことによって生み出されたものだろう。長与本人がプロレスの指導にあたっており、かって長与が率いていた女子プロレス団体・GAEA JAPANにおける第一期生の新人育成でみせた指導者としての力も反映されているのかもしれない。ジャガー横田役の水野絵梨奈のジャーマンスープレックスは本当に見事で、プロレス部分での彼女の貢献度は高い。
また、ヴィジュアル面での再現度の高さも特筆すべきだろう。それは役名のないモブの女子レスラーに関しても徹底しているようだ。YouTubeのジャガー横田ファミリーチャンネルの9月25日に配信された動画では、ジャガー横田が『極悪女王』を見ながら選手の水着で「あれは佐藤ちの」などと家族に教えているというエピソードが披露されている。それができるくらい、こだわっているということだ。
全女のビルを丸々再現するようなこともおこなっていて、「ネトフリすごいな」と素直に感心する。間違いなく、日本のテレビ局ではここまでやれなかったのだろう。