また、風呂敷を広げ過ぎてどうやって回収するのだろうと読者を不安にさせることもあった作品であるが、サハラ砂漠でのしろがね犬の様子が伏線としてしっかり回収されたり、藤田先生はやっぱり侮れない男なのである。エリ公女やシャロン先生といった小さな物語の登場人物が流れの中でメインの大きな物語に参加してくるのもグッとくるところだ。羽佐間さんとヒロシくんの親子がカーテンコールで2人そろって登場するのも良かった。
しかし、この作品には困ったところがある。メインキャラもそうだが、魅力的な登場人物が多すぎるのだ。しかも、みんなが好きすぎるようなキャラが多すぎて、誰が一番好きかという話がしにくい、自分だけが好きなキャラみたいな話がしにくいという……。阿紫花さん、みんな好きでしょ? 三牛親子も、ジョージも、仲町親子も、どなりんジジイも、黒賀村の人々も大好きな人多いでしょ? 馬麗娜とかシルベストリみたいな登場シーンが少ないキャラだって本当に魅力的。多くの登場人物に関して、いかに好きかを長時間語ることができる人が多いと思う。それによって我々の貴重な時間が奪われることになるのだ! 本当に危険であり、困ったものである。
ただ、善治おじさんが好きな人にはまだあったことがありません……。
そういえば、私本人には記憶がないのだが、年下の友人から、昔、知り合う前にライブハウスの階段を「富士鷹ジュビロを俺は許さない!」と言いながら登ってくる自分をみたことがあるという話を聞いた。どう考えても常軌を逸脱した行動である。いったい何に怒っていたのか、今となっては知るすべもないのだが、時期的に『からくりサーカス』のせいで引き起された事態であると思われ、本当に『からくりサーカス』は人の心を狂わしてしまうぐらい魅力的で危険な作品なのである。