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楳図かずお死去:ロマン優光連載315

連載
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当時、楳図先生本人をテレビや雑誌で見る機会が多く、そのただものではないオーラに「不思議な人」として心に焼き付けられることになった。これぐらい漫画家本人が私の心に強烈な光を放ちながら入り込んできたのは、他に水島新司先生ぐらいである。楳図先生本人のことでいえば、先生は音楽も素晴らしく『闇のアルバム』は早すぎた和製ゴスの傑作といってもいいし、「ビチグソロック」や「グワシ!! まことちゃん」は和製グラムロックの傑作だ。

あと、近所の貸本屋で『ウルトラマン』を借りたら、楳図先生がコミカライズしていて、「なぜ、楳図かずおが?」と困惑。バルタン星人回が本当に怖く、面白い一方で「ぼくのよみたかったのはこんなウルトラマンじゃない・・・」と思ったものだ。

楳図かずおとの邂逅

小学校高学年から中学生のころに夢中だったのは『漂流教室』『おろち』『洗礼』といった作品だ。

『漂流教室』は気づいたら歯医者である父の診療所にあった。まあ、父が買ったのだろう。未来人類が本当に生理的にいやだったのだが、そんなことよりも関谷だろう。優しい給食のおじさんだと思っていたおじさんが豹変し、横暴な独裁者として子供たちに暴力で君臨。セコいし、頭悪いし、ほんといいところのない小悪党で、そのクズさが魅力的なクズである。あと、女番長の最後と池垣くんの勇敢な散りざま、レジャーランドの狂ったアンドロイドが強烈な印象を残している。当時も思ったのだが、女番長って呼称なんだかすごい。ユウちゃんがけなげでかわいかったし、帰れてよかった。

『おろち』『洗礼』は中学生になってから、大判で分厚い単行本で読んだ。あの頃、いろんな漫画の旧作が、あの形態で再発されていた。

『おろち』は不思議な力を持つ不老不死の美少女・おろちを狂言回しに運命に振り回される人々を描くオムニバス作品だが、第一話「姉妹」をはじめ、人の心の闇や不思議を描いた傑作ぞろい。「カギ」の幸薄そうな少女が可愛い。しかし、「カギ」の主人公のあだ名がうそつきなのはストレート過ぎだと思うし、女番長といい、楳図先生はたまにそんなネーミングをするところがある。なぜか、「ステージ」に出てくる演歌歌手の花田秀次という名前が心に残っている。

人間の割り切れない感情を描いた「秀才」のラストは、思い起こすたびに単純に感動とはよべない混沌とした感情が沸き上がってきて、自分にとって大切な作品だ。

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