上京して以来、度々街角で楳図先生を見かけるようになったが、いつ見ても異彩を放っていて、その非現実的なたたずまいに、まるで妖精にでも出会ったかのように感じたものだ。
そういえば、上京当時の友人が街を歩いていて「あっ!ラフィンノーズのチャーミーだ!」と思って駈け寄ったら楳図先生だったということがあった。確かに二人ともボーダーのシャツのイメージだし、顔もどことなく似ている様な気がしないでもない。
私は一度だけ楳図先生にお会いしたことがある。
2003年頃CSのテレビ番組で、ロマンポルシェ。として楳図先生のご自宅にロケでうかがったのだ。楳図先生は寿司ロシアンルーレットに参加して当たりのワサビが大量の寿司を食べ、赤白ボーダーのシャツしか入ってないクローゼットを見せてくださったりした。最後には『恋の片道切符』のピアノ弾き語りまで披露してくださった。生で楳図先生のピアノ弾き語りを先生の自宅で聞く機会があるなんて、それまで生きてきて想像だにしたことのない出来事だった。
今、思い出してもあれは非現実的な時間で本当にあったことなのか疑わしくなるのだが、その時にいただいたサインが家にあり、「あれは本当だったのだな」と思う。
訃報を知っても未だに現実味がない。吉祥寺を歩けば、先生が元気に歩いている姿に遭遇するような気がしている。