しかし、新田がダメな作家になったかといえば、そうではない。あのような「なにもない」空間を長期にわたり描き続けられる作家がどれぐらいいるというのだろう。マニアの評価よりも、商業的な成功を選んだ天才が作る、漫画読みを自称するような人間にとどくことのない独自のグルーブ。突如としてボンヤリと姿をあらわす得体の知れない煌めき。それは天才漫画家を降りた天才だけが生み出せる、新田たつおだけの境地である。
人気がある作品だからこそ長期連載になる。普通に考えれば当たり前のことだ。当然ながら内容を熱く語ったり、好きな作品だという人が存在するものである。しかし、そういった例に当てはまらない作品もある。『空手小公子 小日向海流』(馬場康誌)がそれだ。読んでいた人は多かったはずなのに、この作品が好きだという人、熱く語りだす人に未だに会ったことがない。そういうこともあるのである。
あと、『GetBackers —奪還屋—』(原作・青樹佑夜、作画・綾峰欄人)について触れたかったが巻数が微妙なので断念した。ちなみに2020年代に入ってから毎年1回は読み返している。
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文/ロマン優光
画像/『静かなるドン』108巻(新田たつお/実業之日本社)
初出/『実話BUNKA超タブー』2024年11月号