「薬害エイズ事件」というのは科学的なエビデンスを捻じ曲げて製薬会社が利益を優先したためにおこったことである。科学的な検証の重要性について認識すべき事件だったと思うのだが、川田氏にそのような視点があるようには思えないのである。各種データを調べてから判断するというより、最初から製薬会社・医学者・厚生省は真実を言ってないという前提があって、それにそった都合のいいデータを見つけてしまうようになっているのではないかという疑いを持ってしまう。「オーガニックな食事で子どもの発達障害の症状が改善できる」というX上の発言からも、それを感じる。科学的エビデンスが軽視されているのではないか。
政府のワクチン政策に対して疑念を抱いたり、治験データが足りてないのではないかという疑問を抱いたり、副反応に対する不安を抱くのは間違っていないし、大切なことである。健康上のリスクを考えてワクチンを打たないという選択肢も間違っているわけではない。
ただ、いい加減なデータを根拠にしたり、「シェディング」について実在するかのような発言をしたり、陰謀論・スピリチュアル傾向の強い反ワクチン集会に参加したりするとなると話は全然違ってくる。いい加減な情報で不安を煽り、目的が近ければ明らかに問題がある勢力と結託するようなことはダメだろう。
川田氏が推していた『私たちは売りたくない! ”危ないワクチン”販売を命じられた製薬会社現役社員の慟哭』なる本。世界で初めてレプリコンワクチンの製造販売承認を厚労省から受けたMeiji Seikaファルマ。同社の社員有志複数名が、3年前に別のワクチンを接種した後に亡くなった同僚のK氏への想いから、彼の名を冠したチームKを結成し、レプリコンワクチンの危険性を訴えるために「内部告発」として記したという触れ込みの反ワクチン本である。
内容についての批判は当初からあったが、この触れ込み自体が嘘であったという疑惑が陰謀論ウォッチャーである黒猫ドラネコ氏によって報告され、記事になっている。確かに著者は同社社員ではあるが一名によるもので、K氏と面識自体がなかった疑いがあり、もともと反ワク界隈で活動していた人物であったということがMeiji Seikaファルマの内部調査で明らかになったという疑惑だ。それが事実なら売るために嘘をついていたということになる。このことに対して川田氏はどのように思うのだろう。内容は正しいから、売り方が不誠実でも問題はないとするような反応はしてほしくはないのだが。