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7月5日災害予言漫画とサイババ:ロマン優光連載347

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それをいいことに「たつき諒」の偽物がSNS上に現れたりしていたのだが、2020年ごろに現れたなりすまし(男性であった)は非常に悪質であり、本人として『FRIDAY』(202149日号)、『月刊ムー』(20217月号)で「予言」の取材を受けるようなことまでしていた。たつきは引退、版元の朝日ソノラマ社も解散しており、当時の関係者と簡単に連絡を取れない状況がこのようなことを可能にしたのだが、本気でお金と時間をかけて調べれば確認できたはずではある。お金と時間をかけたくない、かけられないからこうなったとも言えるが。

この時期、オリジナル版はプレミアがつき、古本市場で10万円以上の値がついていたという。復刻を求める声が高まっていたのだが、件の「なりすまし男」はたつき諒の代理人を称して飛鳥新社と復刻の交渉をするという暴挙に出る。

自分のあずかり知らぬところで復刻がされようとしているという情報を知った本人が飛鳥新社と連絡をとったことで発覚。本物のたつきの描き下ろしの文章パートを加えた『私が見た未来 完全版』が世に出ることになり、そこに2025年に日本で大災難が起こるということが描かれていたのだ。

それがネット・SNS上で拡がり、その日が迫ると共に騒ぎが盛り上がり、香港では地元の占い師が便乗した予言をおこなうなどしたことで日本への月の渡航回避という騒ぎが生まれた。

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『天使の遺言』

たつき本人はこの騒動をうけて、6月15日に竜樹諒名義で自叙伝的作品(漫画ではなく文章である)『天使の遺言』を自費出版を取り扱うことで知られる文芸社から自費で刊行。出版社の意向中心で出版されてしまったことが不本意であったことなど、騒動に対する見解を述べ、「なりすまし男」が勝手に『私が見た未来』を解釈して、描いたおぼえのないデタラメな予言が描いてあるかのように公言していたことで迷惑したことについても語られている。「なりすまし男」の話は本当に恐怖であり、これはこれでちゃんと取材して記事にすべきだと思う。

全体的にスピリチュアルな話が中心で、騒動の影響で防災の呼びかけも目立つ。本人が選んだ自作漫画も2作収録されている。今まで書き溜めてきた自伝的要素とスピリチュアル要素は分けて出版することにして、本書ではスピリチュアル要素は省略したという内容のことが本文に書かれているが、実際のところスピリチュアルにハマってない人が読むとスピリチュアルでいっぱいである。

『私が見た未来 完全版』『天使の遺言』を読んでいくと、色々気になることはあるのだが、まず『私が見た未来』に災害にまつわる予言漫画は掲載されていない。「夢日記をつけているのだが、夢で見たことが現実で起こることがある」というエッセイ漫画が2本収録されているだけだ。

・叔父の葬儀で田舎に行くことを1年前に夢で見ていた。

・1976年にフレディ・マーキュリーが流行り病で死ぬ夢を見た。1986年にクイーンの銅像が立っているがフレディの像がなく、別の人物の像になっているという夢を見た(フレディ・マーキュリーが亡くなったのは1991年)。

・夢で見た景色と同じ場所に1年後に現実で通りかかった。その場の写真を撮ったら、その写真の現像があがる日に(当時はデジタルでないので現像にださなければならない)その場所で遺体が発見されたというニュースを見た。夢でその場所にいた人物と服装や特徴が似ていた。

・「彼女に恋愛感情がもてない」と語る夢をみたら、次の月に最近連絡を取ってなかった友人から「恋愛感情がもてない」と言われてふられたという連絡があり、ふった男性の写真が夢の男と似ていた。

・「1981年に津波の夢を見たが予知夢かも」という話。漫画内の夢日記には「9696か?夏?」と描かれている。

どれもなんというか微妙なものである。直後に予知だったと判明するのではなく、夢を見てからそれが現実に起きたと解釈するまでの時間が大きく空いているのも気になるところだ。いくらでも心理的補正が入り込める時間がある。そして、どの事案もたつきの解釈や「同じ」「似ている」といった思い込みで成立しているようにも取れる。

また、この時点で20年ぐらい夢日記をつけているのに、これぐらいの事例しか(この程度の例しか)あげれていないということでもある。

とにかく漫画内に災害の具体的な予言のたぐいのものはなく、どうとでも解釈できる夢の話が描かれているだけなのである。

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