復刊当時、「なりすまし男」はメディアで富士山大噴火の予言について発言したり、物騒な予言話をバラ撒いて注目をあつめており、飛鳥新社(2018年から細木数子『六星占術によるあなたの運命』シリーズを出していた)もその路線で「なりすまし男」のそういう話を掲載する形で復刻を考えていたのではないだろうか。
たつき本人が名乗り出たことで「なりすまし男」の登用はなくなったが、たつき本人が語り下ろしで語りたかったのはサイババに対する信仰めいたものや、「心の時代」が来るといったようなことであり、これは売れ線ではないので、できるだけ「なりすまし男」のような煽った感じで行きたかったのだと思われ、宣伝の仕方を含め、随所にそれを感じる。
「心の時代」について語りたい、精神や魂が進化しなければいけないということを語りたい作者。災害予言煽りで売っていきたい飛鳥新社。両者の間には明確な方向性の違いがあり、そういうところが不本意だったのだろうなと思う。
たつき諒自身は善良な人だということは、『天使の遺言』の本人紹介にある、
「夢は「人を助けるためなら、みんなが当たり前に行動する世界」「みんなが相手の気持ちになって考え、思いやりの心を忘れない世界」が実現すること」(p.218)
という一文をはじめ、文章の随所から伝わってくるし、人類がより良くなってほしいと本気で思っているのだろう。しかし、2011年3月の予言が当たったことで自分の言うことが人から聞いてもらえるようになったと熱く綴る様子は、「なんだかなあ」と思わざるを得ない。
『天使の遺言』から省かれたスピリチュアルな部分は、あのスピリチュアル業界の雄・「たま出版」から『エデンに還れ』というタイトルで出版されるという予告が本文にあったが、さすが「たま出版」(ちなみに文芸社の創業者・瓜谷綱延はたま出版の創業者・瓜谷侑広の次男)。ビジネス・チャンスを逃さない姿勢に脱帽である。というか、なんか勘弁してほしい。