「大災害は2011年3月」という表紙の文は表紙イラストの締切日に夢で字だけ見たものであり、具体的なものは何もない。
表紙には6枚のイラストが配置される予定で「大災害は2011年3月」が置かれているのは、そのうちの1枚が配置される予定の場所だった。他の5枚には夢でみたものが描かれている。このうち、ダイアナ妃の死を思わせるもの、富士山大噴火については本人が予言ではないと『完全版』の描き下ろしパートで否定しているし、残りはたつき個人の未来に関するもののようでそれこそ解釈の問題としかいいようのないことが言及されている。
ようするに『私が見た未来』には予言が成就したと言い切れる記述は何もないのである。
インド旅行の影響
今、話題になっている「2025年7月5日に大地震」説に関してだが、『完全版』の書き下ろし部分で1998年にインドに行っているときと、最近(2021年)の2回、日本の南で海中が盛り上がり日本列島に津波が押し寄せる夢を見たとある。後者の夢では2025年7月という日付も見たということらしい。漫画の津波は2011年3月のものではなく、2025年に起こるものなのではないかとも書かれている。あとがきには夢が実現することがあるなら7月5日であると日付まで書かれているが、『天使の遺言』では、
ちなみに、『私が見た未来 完全版』の「作者あとがき」で、「次に来る大災難の日は『2025年7月5日』ということになります」と書いていたのは、過去の例から、「こうなのではないか?」と話したことが反映されたようで、私も言った覚えはありますが、急ピッチでの作業で慌てて書かれたようです。(p.129~130)
とわかるような、わからないようなことが書かれており、また、夢で見る日付はその出来事が起こったことを自分が知る日で出来事が起こる日ではないということも書かれている。しかし、そんな大きな出来事が起これば、当日に知ることになるだろうし、せいぜい日付またぐぐらいの時間に起きたのを日付またいでから知るぐらいしかないだろうから、あまり意味がないのである。
また、『完全版』では大災難後に素晴らしい世界がやってくるということが書かれており、心の時代がやってくるというようなことが述べられている。
『天使の遺言』ではそれを補足するような形で、2001年の夢で「争いと欲に満ちた荒廃した世界」「輝かしい未来・光り輝く愛の世界」の相反する2つの世界が見えたと語っており、他の記述とあわせて考えると、人類が心を正しくもてば大災難後に素晴らしい世界がやってくるということのようだ。
たつきは1998年にインド旅行をしてから、本人の言葉を借りれば「覚醒」し、スピリチュアルな方向を強めていったようだ。自身の前世はサイババ(の前世にあたる人物)の娘だったと語っている。
漫画自体はそれ以前に描かれたものであり、かつての少女漫画界隈によく見られた軽いオカルトやスピリチュアル好き(山岸涼子のエッセイ漫画にみられるようなもの)以上のものは感じられない。そういうのを話題に仲間内で盛り上がるぐらいのものである。
しかし、インドを旅し、漫画業界を離れてからスピリチュアルなものへの傾倒を強めている。描き下ろし部分を読むに、『完全版』の段階では相当なものになっていたことがうかがえ、自作に対する解釈も描いた時のものとは違っていただろうなという気がする。