社会に増加していく差別的な空気に対する疑問から生まれた
『陰謀論と排外主義 分断社会を読み解く7つの視点』 (扶桑社新書 555)はそういった今の日本を席巻している「陰謀論ブーム」「排外主義ブーム」を多角的に分析し、その実態にせまった本である。
寄稿者は黒猫ドラネコ、 山崎リュウキチ、藤倉善郎、選挙ウォッチャーちだい、清義明、古谷経衡、菅野完の七人。
黒猫ドラネコ氏、 山崎リュウキチ氏のような陰謀論ウォッチャー。
宗教団体やスピリチュアル、自己啓発セミナー、疑似科学団体といったカルト団体を取材してきたニュースサイト「やや日刊カルト新聞」総裁の藤倉善郎氏。
選挙ウォッチャーちだい氏のように各地の選挙を取材・レポートする中で、N国から端を発する、選挙をハックしてマネタイズを図るような新しい「政治活動」の存在に警鐘を鳴らしていた人もいる。
清義明氏のような英語圏の匿名画像掲示板・「4chan」「8chan」から生まれた、2021年のアメリカ合衆国議会議事堂襲撃事件を引き起こすきっかけとなった陰謀論運動であるQアノン・ムーブメントと日本の2ちゃんねる文化の研究で知られる人物もいる。
過去にネット右翼として活動していた経験に基づき、日本の「保守」運動について考察している古谷経衡氏。
『日本会議の研究』や斉藤元彦兵庫県知事についての取材で知られる菅野完氏。
それぞれ、違う立場から陰謀論と排外主義の結びつきに接してきた人たちだ。
左からの右へのカウンターを目指した本というわけではないし、左右の思想的な対立が取り上げられているわけではない。
執筆陣の中には自認がリベラルとか左翼でない人もいる。排外主義・差別主義に対する街頭でのプロテスト活動に対する距離の取り方もそれぞれ違うだろう。
