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「ぶつかりおじさん」の話と『アンチマン』の話:ロマン優光連載243

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『アンチマン』で描かれたぶつかりおじさん

そういえば双葉社のwebアクションで配信されている岡田索雲先生の読みきり漫画 『アンチマン』が、今回ぶつかりおじさんがSNSで話題になった流れの発端だったわけだ。主人公の頭に刃物がささり、主人公が子供の頃から好きだったヒーローのジャスティスブレードと同じ形になるところが、本当にひどいし、哀しい気分になるし、笑ってしまうし、悪意と哀しみが溢れていて、あの漫画の一番いいシーンだと思う。

『アンチマン』のテーマが社会問題としてミソジニーやアンチフェミと呼ばれるような人たちを描くことにあったのかについては個人的にはわからない。

前作にあたる『ようきなやつら』では、直接的に差別の問題について取り上げていた。一方で前々作である『メイコの遊び場』は、作者本人も言及していた平山夢明作品のようなバッドテイストの色が濃厚にうかがえる作品であった。社会派とか、人権意識が高いとか、そういう風にくくるのも創作というものを単純化しすぎではないだろうか。どんな作品でも、「人間」というものを描いている人なのかなとは思う。

自分が『アンチマン』に感じたのは、どん詰まりの人間、孤独な人間の姿だ。単にミソジニーやアンチフェミをテーマに描くのであれば、主人公の女性憎悪の根元に母親に捨てられたことがあるという古典的な背景を置く必要はないのではないか。そういったものの問題を描いたというより、そういったものにすがってしまう「人間」の姿を描いているように自分はとらえた。

どこまでが現実で、どこまでが主人公の妄想かの境界があいまいな作品だ。解釈も色々わかれるだろう。そういう部分の答えは作者しか知り得ないわけだし。

人間の愚かさと哀しさ、人生というものの不条理と救われなさを悪い笑いで描いた作品として自分はとらえていて、前々作、前作を踏まえたうえで先に進んだ作品だと考えている。

 

〈金曜連載〉
画像/2016年2月11日・『FOXムービー プレミアム短編映画祭』授賞式(都内某所)

 

PROFILE:
ロマン優光(ろまんゆうこう)
ロマンポルシェ。のディレイ担当。「プンクボイ」名義で、ハードコア活動も行っており、『蠅の王、ソドムの市、その他全て』(Less Than TV)が絶賛発売中。代表的な著書として、『日本人の99.9%はバカ』『間違ったサブカルで「マウンティング」してくるすべてのクズどもに』(コアマガジン刊)『音楽家残酷物語』(ひよこ書房刊)などがある。
twitter:@punkuboizz

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