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「ぶつかりおじさん」の話と『アンチマン』の話:ロマン優光連載243

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編集氏から「今回、Twitterで話題になってるぶつかりおじさんについてどうですか?」とメールが。以前からたびたびネット上で話題になっている、駅の構内などで、わざと女性にぶつかりにいくという成人男性のことだ。その動機について考察されたり、その実在について取り沙汰されているが、実際どうなのだろう。

自分のよく利用する駅の動く歩道は通勤時間帯は止まって乗ってる人と歩いていく人が混在している(いいかわるいかはともかく現状はこれだ)のだが、止まってる人は東京のエスカレーターと同じように左側によって立っていて、右側と人が立ってないスペースを利用して歩く人は歩いている。人が横を通って歩いていくのに十分なスペースが空いているのにもかかわらず、動く歩道の真ん中よりの方をわざわざ歩いて、前に立っている人、歩いている人を追い抜かす際にぶつかっている男性たちを週1、2回くらいは見る。女性には躊躇なくぶつかるのに、前にいるのが体格がいい男性だと普通によけている人もその中にはいる。

通路の真ん中よりに立ったり、のんびり歩いたりして、後ろから急いで歩いてくる人の進路妨害をしている状態になっている人もいることもあるが、声をかけてよってもらえばいいという話だし、自分が半身になって通れば通れるぐらいのスペースは別にあるのだ。そこを無理矢理ぶつかり気味(実際にぶつかったりもする)に通るのはどんなものか。避けれるものをわざと避けてないのだから、あれはわざとアタリにいっていると言ってもいいだろう。

「ぶつかりおじさん」に関しては女性だけでなく小柄な男性もぶつかられる話も聞く。女性限定ではなく自分より弱そうな人を狙っているということかもしれない。わざとぶつかってくる女性の話もある。ただ、ぶつかられる側が派手な感じではない若い女性で、ぶつかる側が男性という事例の報告が多いわけで、「ぶつかりおじさん」の存在が取り沙汰されるのは仕方がないのでは。

正面から露骨に何度も同じ人にぶつかりにくるような人間はさすがに常軌を逸脱している。大量に存在しているわけではないだろうし、珍しいから話題になるのも確かだ。ただ、そこまでいかない、さりげなくわざとあたっていったり、相手に当たってもかまわないぐらいの予備軍的な人はそれなりの数いるのではないかと思う。

学生の頃、いじめの一つとして廊下でわざとぶつかって無視していくような連中を見た。そういうたぐいの、弱者をいたぶってストレス解消をしているのかなとも思う。いじめの加害者にもよくいるが、やっている者の中には正当な制裁を加えているつもりの者もいるのかもしれない。ぶつかる側より肉体的に弱そうだから女性がターゲットにされやすいという考察はできるだろう。

ただ、本人にあたって調査をしているわけではないから、あくまで推測であり、ミソジニーが主な原因だととも断言することもできない。しかし、「ぶつかりおじさん」の話題に関して、話半分に聞いてたとしても「そんなことをしてるとしたら、ひどいな」というような感想よりも先に、女性による捏造を疑ったり、ぶつけられた女性側に原因がある(あるいは女性側がぶつかっている)ように主張するのは、変わった反応だと思う。被害者意識が強すぎるし、女性の主張は何がなんでも認めたくないという奇妙なふるまいに見えてしまう。普段、SNS上でミソジニーとしか言いようのない言説をとなえていたり、そのたぐいのデマの拡散に尽力しているアカウント群が「ぶつかりおじさん」を擁護していたら、ますます「ぶつかりおじさん」の動機がミソジニーからくるものであるという印象は強くなるのでは。

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