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松浦大悟が語るLGBT運動の欺瞞

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「LGBTへの差別をなくそう」と聞けば誰もがうなずくし、社会はLGBTの権利を広げていく方向に進みつつある。しかし、自身もゲイであることを公表している元参議院議員の松浦大悟氏は、現在のLGBTを取り巻く状況に疑問を呈している。LGBT運動の問題とは何か、松浦氏にインタビューを行った。※このインタビューは2021年10月に行われたものです。

昨今、“ポリコレ”という概念の浸透に伴い、LGBT等の性的少数者への差別をなくそうとする風潮が高まってきている。が、いまだ性的マイノリティへの無理解や偏見は根強く存在しているのもまた事実だ。同性婚の実現や、与野党それぞれが立案するLGBT法案、トランスジェンダー女性の女子スポーツへの参加や女性用スペースの使用の是非について等々、“公平な世の中”を目指すために、解決すべき課題は山積みである。そんな中“新しいLGBT論”を提唱しているのが、自身がゲイであることを公表し、2021年9月に『LGBTの不都合な真実 活動家の言葉を100%妄信するマスコミ報道は公共的か』(秀和システム)を上梓した元参議院議員の松浦大悟氏だ。「あえて急進的LGBT活動家が触れたがらない不都合な真実もあぶりだし、保守の立場からの新しいLGBT論を提唱する」という氏の言葉にある、多くの人々が知らない“LGBTの不都合な真実”とはいったい何なのか、松浦氏に話を聞いた。

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対話を否定するLGBT運動

――著書の中で『新潮45』騒動(※1)に触れていますが、小川榮太郎氏への松浦さんの評価は意外でした。

松浦大悟氏(以下、松浦) 騒動の後、小川榮太郎さんと対談する機会があったんですが、アメリカのガチガチの原理主義者とは違うなと思ったのは、彼はL・G・B・Tといって性を固定化すること自体がナンセンスだって言ってるんです。

性は流動的なものであり、異性愛者の自分であってもある日、急にゲイになるかもしれないと。実は小川榮太郎さんって三島由紀夫研究の人なんです。で、尊敬する三島由紀夫はゲイなわけです。だから、そこへの理解はあるんですよ。けれども、そこまで踏み込んで分析するようなメディアはなく「イノセントなLGBTを保守論客の小川榮太郎が差別的な言動で傷つけた。差別だ!」と。けれども、差別を糾弾してるっていうような形を取りながら、私には何か別の物に見えた。騒動の発端は立憲民主党のレズビアン議員である尾辻かな子さんでしたが、政治家がそういう行動を取るっていうのは、ある種の目的があるから。LGBTの怒りを政治的な源泉にしようと利用した可能性は大いにある。そこまで考えなきゃいけない問題なのに、あまりにも素朴に乗っかってしまっている人が多いな、っていう印象でしたね。

――世間の人々の「保守=LGBTに差別的」という印象が、より強くなったことは間違いないと思います。尾辻さんに、そういう思惑があったとしたら、それは成功したのかもしれません。小川氏が、LGBTと痴漢を同列に扱ったことについて、当事者としてどう思いますか。

松浦 小川榮太郎さん的な考え方をする人は、世の中にはごまんといるわけで、じゃあ、そういう人たちを排除すれば、差別がなくなるのかというと、そういうことではないですよね。抹殺して、刑務所にぶちこむわけにはいかないのだから。お互いを傷つけ合わないように、ともに生きていく社会を、どうやって作るのかというところを、考えていかなきゃいけないのに、そこの視点が足りない。リベラル勢力が今やっていることは、ポリコレ、漂白社会を作っていくこと。異物を排除することによって、目の前は綺麗になるかもしれないけど、そんなものは簡単にアンダーグラウンドに潜っていくわけで、なんの根本的な解決にもならない。お互い理解し合えなくても「そういう人もいるよね」ってことで、暮らしていける社会のほうが、LGBTにとっては住みやすい社会だと思うんです。

――糾弾ではなく対話することこそがLGBTへの理解につながるということが、著書にも書いてありましたが、どんな相手であっても対話する姿勢であると。

松浦 そんな人格者でもないんですけどね(笑)。対話が大事っていうのは、今のLGBT活動に対する皮肉というか。
ま、私の本のすべてが皮肉なんですけど。彼らがあまりにも対話を否定するものだから、「いや、対話は大事なんじゃないの」って、逆転して見せたんです。

様々な利権をめぐっての綱引き

――先ほど「イノセントなLGBT」という言葉が出てきましたが、それは、どういう意味ですか。

松浦 LGBTといったって、セクシュアリティ以外は一般の人と同じですから、政治的にLGBT運動を利用している人もいれば、金儲けのために利用してる人もいる。けっして純粋な存在ではないんですよね。そういうところに想像力がおよんでないんじゃないかと。「これまで差別をしてきた我々」っていう異性愛者の罪悪感を払拭するために、LGBTへの配慮が過剰にされてしまっています。国会でもLGBT法の議論が行われてますけど、一般の異性愛者の人たちは、勘違いされてるんじゃないかと。

――勘違いとは?

松浦 LGBTを差別から救うための、ピュアな法律だと思ってるかもしれないけど、そうじゃない。箱物行政と紐づいてる話なんですね。男女共同参画社会基本法ができたときに、全国各地にウィメンズセンターが乱立しましたが、それと同じことがおそらく起こるだろうと。誰がそこにセンター長として入っていくのか、講演会の講師は、どの派閥の誰を呼ぶのか。あるいは教材を作るときに、どのLGBT団体に頼むのか。自民党側と野党側のLGBT活動家のどちらがその主導権を握るかっていう、様々な利権をめぐっての水面下の綱引きが行われているわけです。自民党案のLGBT理解増進法が通る か野党案のLGBT平等法が通るかでそれが変わってくるわけですから、活動家の人たちも必死です。異性愛者の方々は、そういうことをわかってますかって話なんですよ。

同性婚導入には憲法改正が必要

――なるほど……LGBTと憲法の問題でいえば、同性婚の問題があります。著書で「同性婚には賛成、けれども、解釈改憲での導入には反対」というスタンスを表明していますが。

松浦 私は憲法改正によって同性婚を認めるべきだという主張です。LGBT活動家あるいは立憲民主党を中心とした野党は、ポリコレ国家を作ろうという下心が見えます。彼らは現行憲法において、すでに同性婚はできるという立ち位置で、トップダウンでやってしまおうという考え方です。私はそれではうまくいかないと思います。多くの人たちが心の中にモヤモヤしたものを持っている状態で、同性婚を導入したとしても、陰で「憲法違反カップルだ」って後ろ指をさされるに決まってる。地方で、おじいちゃん、おばあちゃんに「今日から男と男が結婚できるようになりました」と言っても「バカなの?」って言われますよ。そういうことが、都会の理論だけのリベラルな人にはわからないんだろうな、と。それから解釈改憲での同性婚をたとえ認めたとしても、政権が変われば簡単に覆る可能性もあります。実際にアメリカではオバマ政権の時に解釈改憲で同性婚を導入しましたが、トランプ大統領はこれをひっくり返すために保守派の判事を連邦最高裁に送り込みました。そうさせないためにも憲法改正が必要なんです。

――著書の中で、同性婚と天皇制の問題についても触れられています。同性婚が導入された場合はいずれ皇族にもそれが 適用される。もしも皇族に同性愛者がいたとして、日本国民が彼らにだけ同性婚を許さないとしたら、国際的スキャンダ ルになること。さらには、現在は、男系男子が絶対条件とされている継承問題をどうするか議論する必要性が出てくるということですが。

松浦 そう。だから小室圭さんの話をしてる場合じゃないんですよ(笑)。イギリスでは同性婚導入時に王族の同性婚についても法整備を行いました。オランダでは今年10月に、王位継承者が同性婚をしても継承権は失われないとの判断を首相が示しました。活動家は「同性婚が施行されてもあなたの生活は変わらない」といいますが、嘘ですよ。国のかたちが大きく変わるのです。

――こうした複雑な事情があるからこそ、自民党は同性婚に慎重ということですか。

松浦 そこは盲目的に反対の人も多いとは思います。自民党の中では議論さえしていないですから。保守論壇の勘違いもあるんです。「同性婚をはじめとしたLGBT運動は、共産主義者たちがやらせてる」「LGBT運動は共産主義者たちが家族を解体するためにやってることだ」っていう。でもそれだけでは分析として不十分です。

素朴な運動が乗っ取られた

――LGBTは左翼と結びついているという。これは実際、どうなんですか。

松浦 日本のLGBT運動のことでいえば、ある時期までは素朴な権利獲得運動でした。それが途中で変わったんです。
我々が2013年にLGBT研修で訪れたアメリカで教わったのは3つです。1つはメディアを使えということ。それもニュースではなく、人々の感情が動くようにドラマを使えと。その後、日本でも『おっさんずラブ』をはじめ、いろんなLGBTドラマが花盛りになりました。そこにはLGBT活動家が監修に入っています。2つめは裁判闘争。アメリカは裁判によってこれを認めさせてきたと。日本でもLGBT裁判がものすごく増えました。アメリカに研修に行った弁護士さんたちが、これをやってるわけです。3つめがアライ(※2)を増やせ。性的マイノリティはどこまでいってもマイノリティで数が少ない。応援団を増やさないといけないんだと。そうやってアメリカ流のやり方を実行した結果、あれよあれよと運動に関わる人が増えていって。今はコロナ禍でパレード(※3)は開催できませんけど、オンラインで開催されたものでいえば、1日のアクセスが76万人ですよ。保守系雑誌の編集者にその話をしたら「コミンテルンのやり方にそっくりだ」と言われました。そして、これまでパレードの批判をしていたLGBTの学者や超左翼の人たちを、一緒にやろうと囲い込んだ結果、逆に彼らに母屋を乗っ取られた。左翼的な学者の先生方が、理論的な支柱になっていって、LGBT運動は左翼運動になっていったわけですね。若い活動家は思想なんてものはないので、シロアリが内側から柱を食い尽くすように、簡単にやられてしまいますよね。祝祭を一緒に経験することでこれまで性的マイノリティに関心がなかった人々にもシンパシーの輪を広げ、社会に気づきをもたらした」と評されていた日本のLGBTパレードに、「対話路線は無意味」とするANTIFA(※4)といった過激な極左が接近したことで、善悪二元論に支配されるようになったんです。

竹中平蔵氏もLGBT推進

――一方で保守は、LGBT運動に対して、どういうスタンスなのですか。

松浦 実は、LGBT運動を推進しようとしてる勢力には左翼活動家以外に、グローバリスト(※5)も関わっているんです。グローバリストには政治的グローバリスト、経済的グローバリスト、宗教的グローバリストの3種があって、まず政治的グローバリストの話で言うと、メディアは「自民党はLGBT運動に反対している」という部分しか伝えないけども、実は自民党の半分はこれを、推進しようとしてるんです。どういう人が推進しようとしてるかというと、地方の知事さんたち。LGBT条例を作った茨城県知事、鳥取県知事、三重県知事、これらの人たちは海外で勉強して帰ってきたグローバリスト、帰国子女なんですね。アメリカ民主党とのパイプが非常に強い人たちだから、バイデン政権のそういう意向を、おそらく阿吽の呼吸で汲んでるんでしょう。2つめの経済的グローバリストというのは竹中平蔵さんみたいな方たち。竹中さんは、最近LGBTのイベントにしょっちゅう出てきているんですが、それはLGBTに反対なんてしてると海外で商売なんてできないから。バイデン政権の大統領就任式のときに「俺たちのアメリカを取り戻したぞ」って、ハリウッドスターたちが大饗宴をしたじゃないですか。あの人たちに逆らって、「俺はべつにLGBTはなんとも思ってないけど」って姿勢の企業は、世界で商売できない。むしろ、そこに乗っかりたいということで、グローバル企業は軒並みLGBTを推している。3つめの宗教的グローバリストは、創価学会のことです。いま創価学会は、国内よりも、海外の創価学会インターナショナルのほうが、信者人口が多いんです。当然、そこは無視できないということで、公明新聞や聖教新聞に、LGBT活動家の子たち、あるいはロバート・キャンベルさんなどを登場させて、強くプッシュをしてる。LGBT議連の事務局長の谷合正明さんは公明党の参議院議員ですが、市議会議員をされていた彼のお母さんは、性同一性障害の問題に、日本では誰よりも早く取り組んだ人です。だから、性同一性障害の方々は、創価学会信者がものすごく多いし、トランスジェンダーの人たちでも、公明党を支持する人は多い。つまり、共産主義者とグローバリストが同床異夢で駆動させているのがいまのLGBT運動なんです。そこで浮上してくるのが評論家の故・江藤淳さんが苦悩したアメリカと戦後日本の関係についてです。LGBT運動においてもアメリカ追従で本当にいいのかと。神道政治連盟を背景に持つような自民党の議員さんたちはこうした「アメリカの影」問題を直感的に感じているので、欧米由来のLGBT法を作ることに躊躇しているのだと思います。「自民党は『差別は許さない』ってことさえも許さない政党なんだ」っていうような単純な話じゃないんです。

――なるほど。すごく勉強になりました。最後に、松浦さんの今度の活動のご予定などがあれば教えてください。

松浦 やり残した仕事があると思っているので、国政に戻ることは目標に抱えつつも、そんなに生易しい話ではないので、日々努力をしていかないといけないと思いますよね。ちゃんと認めてもらえる活動を、地に足のついた形でやっていきたいと思います。

取材・構成/大泉りか
撮影/武馬怜子
初出/実話BUNKA超タブー2021年12月号

【注釈】
※1 『新潮45騒動』…自民党所属の杉田水脈衆議院議員が『新潮45』8月号に寄稿した小論で「(LGBTには)生産性がない」と発言。大バッシングとなり自民党前デモにまで発展することとなった。それを受けた『新潮45』10月号、「そんなにおかしいか『杉田水脈』論文」特集にて、小川榮太郎氏が痴漢とLGBTを同列のものとして扱って再び炎上。『新潮45』は事実上の休刊となった。
※2 アライ…LGBT+Q当事者たちに共感し、理解、支援する人のこと。
※3 パレード…東京レインボープライド。特定非営利活動法人 東京レインボープライドが開催する、LGBTQをはじめとするセクシュアル・マイノリティの存在を社会に広め、「“性”と“生”の多様性」を祝福するイベント。
※4 ANTIFA…欧米などでの「反ファシズム」を掲げる極左運動。
※5 グローバリスト…地球を一つの共同体と見なし、世界の一体化(グローバリゼーション)を進める思想の持ち主。

 

PROFILE:
松浦大悟(まつうら・だいご)
1969年生まれ。神戸学院大学卒業後、秋田放送にアナウンサーとして入社。秋田放送を退社後、2007年の参院選で初当選。一期務める。自殺問題、いじめ問題、性的マイノリティの人権問題、少年法改正、児童買春児童ポルノ禁止法、アニメ悪影響論への批判、表現の自由問題などに取り組んだ。ゲイであることをカミングアウトしている。著書に『LGBTの不都合な真実 活動家の言葉を100%妄信するマスコミ報道は公共的か』(秀和システム)。

松浦大悟 撮影/武馬怜子

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