森喜朗は未だに岸田政権の人事に介入
就任前に、テレビ番組で総理になったらやりたいことを聞かれ、「人事です」と答えたトンチンカンな岸田文雄首相。政治理念も政策への思いもなくただただ「人事」が大好きだそうだ。
9月13日に発足した第二次岸田再改造内閣。総理が好き放題に人事を楽しんだかというと、じつはそこに介入してきた2人の「老害」がいた。自民党元幹部は明かす。
「森(喜朗・元首相)さんと麻生(太郎・副総裁)さんです。自分の思うままに好き勝手言って、思い通りにいかないと、影で反岸田包囲網を作って脅したりする。岸田さんも根性なしなので2人には気を遣って言うことを聞いた。まあ聞いておけば自分を支えてくれるという計算もあったと思うが……。いずれにしても老害、そろそろ引っ込んでほしい」
では、2人は今回の人事にどう関わったのか。まずは御年86歳の森喜朗元首相。議員はとうに引退しているが、東京オリンピック組織委員会の会長などを歴任。文教族で教育分野をはじめ、バックにはスポーツ界、建設業界、ゼネコンなどが控え、今も利権の中枢にいる。森氏の言うことを聞かなければ、政策面でこうした業界と齟齬が生じてしまう。面倒臭い老害だ。
森氏は、8月3日、内閣改造と党役員人事を控えた岸田氏と会食し、人事に対してより具体的な人物の名を挙げて提示したという。具体的に名前を挙げたのは、かつては森派でもあった安倍派5人衆と言われる萩生田光一政調会長、西村康稔経産相、松野博一官房長官、世耕弘成参院幹事長、高木毅国対委員長。岸田首相は結果的にその全員を留任させるなど森氏の意向に完全に従った。
岸田首相側近は言う。
「岸田首相の立場を完全に下に見ている森氏は、自分の都合いいように動いていました。安倍派は自民党最大派閥で、岸田首相が自分の身を守るためには安倍派の支持は絶対必要。森氏は安倍元首相亡き後、完全にオーナー気取りです。森氏は『安倍派に支持してもらいたいなら5人を留任させろ』と岸田首相に言い、5人には『俺が岸田に言っておいた』と恩を売る。岸田首相も5人も森さんに頭が上がらないというわけです」
しかも、小渕優子氏を選対委員長に就けたことにも森氏が絡んでいるという。森氏は、今年6月に死去した参院のドンと言われた青木幹雄元参院議員会長に、生前小渕氏を何とか表舞台にと頼まれていたという。青木氏の小渕氏に対する愛情は強かった。
一方で、青木氏は同じ派閥の茂木敏充幹事長を嫌っていた。元々旧小渕派としてスタートしたこの派閥を受け継ぐのは直系の娘の小渕氏であり、茂木氏が多数派工作をして派閥会長になったことに怒っていた。いまでも青木氏に近かった同派の議員たちは、小渕氏を応援し、青木氏同様に茂木氏を嫌っている。
そんな複雑な派閥事情を解決するのが小渕氏の起用なんだ、と森氏は得意げに岸田首相に説いたというのだ。