「おばさん」という言葉が問題視される近年の風潮
近年「おばさん」という言葉を使うことは好ましくないとされるようになっています。例えば、今年1月に自民党の麻生太郎副総裁が、上川陽子外務大臣について、
「俺たちから見てもこのおばさんやるね」
と発言したことに対して批判が集まりました。麻生氏はこの時、
「そんな美しい方とは言わんけれど」
とも言っており、こちらの発言があったからこそ「おばさん」という言葉も一緒に批判されたのかもしれませんが、いずれにしても「おばさん」という言葉が「ルッキズム(外見至上主義)」だとして批判されることとなりました。
しかし、「美しい方とは言わん」がルッキズムなのはその通りとしても、「おばさん」もルッキズムであるとはいささか乱暴な主張ではないでしょうか。「おばさん」の言葉の意味は、
1.よその年配の女性を親しんで言う語
2.子供に対して、大人の女性が自分を指して言う語
だとされています。
言葉そのものが差別的な意味を含有しているのであれば、それは差別用語だと言って差し支えないと思いますが、「おばさん」という言葉そのものに差別的な意味はありません。
差別的な文脈で使われるようになった言葉はすべて悪か
「『おばさん』という言葉が差別的な文脈で使われていることが多いので、その言葉自体も問題なのだ」という意見もあるかと思います。しかし、差別的な意味で使われるようになった言葉はすべて使うべきでないとするのであれば、使っていい言葉はどんどん減ってしまうことになり、どんどん日本語は減っていき、表現は貧しいものになっていきます。差別的な文脈で使われているのが問題なのであれば、あくまでその文脈に対して反論すべきであり、「おばさん」という言葉自体を好ましくないとするのは間違っています。
年齢に紐づいた言葉は「エイジズム」だからすべて悪だと主張する人も、もしかしたらいるかもしれませんが、そうなれば、「おばさん」どころか「おねえさん」も「おばあさん」も「中年女性」も「高齢女性」も全部ダメで、「女性」という表現以外すべてアウトということになります。もっとも、それすら「性差」を強調している言葉だからアウトだ、という論にもなりかねませんが。