291回 西新宿タワマン刺殺事件で被害女性がなぜか叩かれまくった件
5月8日未明に起こった、西新宿のタワーマンションの敷地内で25才の女性が待ち伏せしていた51才男性に刃物でメッタ刺しにされて殺害された事件。例のごとく、はっきりとした情報が出ないうちからネット上には被害者を叩く人間が出現し、げんなりさせられた。道義的な問題や情報リテラシーの問題ももちろんそうだし、そんなことを書いたら訴えられることもあるということがわからない危機意識のなさにもうんざりだ。
被害者が水商売に従事していたこと。加害者は金を返してほしいと主張していたこと。加害者の父がマスコミに語った、息子は結婚したいなら金を出せと言われていたという話。こういった断片的な情報から「悪質ないただき女子に騙されて大金を奪われた可哀想な中年男性の復讐劇」というストーリーが形成され、それにそって被害者が盛大に叩かれていたわけだが、「純情な中年男を性悪な商売女がだまして復讐された」という昔ながらの物語と昨今のネット上で顕著に見られる女性叩きの風潮が合わさって、本当にひどいものだった。
昔から女性被害者が水商売に関わったことがあったり、見た目が派手に見える写真が報道されたりすると、被害者に落ち度があったとして叩く風潮がある。その最たる例が桶川ストーカー殺人事件であり、警察のミスを誤魔化すための意図的なミスリード、それに乗っかったマスコミのいい加減な報道もあり、被害者に対するいわれのないバッシングが起こり、被害者の名誉を傷つけ、遺族の心を傷つけた。友人に一人では心細いからと頼まれ、一緒にスナックのバイトに入ったが、むいてないからと2週間でバイト代も貰わずに辞めたことが風俗店勤務とされ、一部では性風俗に従事したという報道がされた。また、ブランド品を数点持っていたことが「ブランド狂い」とされ、被害者がさも派手で不品行な生活をおくっていたかのように取り上げられた。
後にこういった誤情報を是正する報道がなされたが、叩くだけ叩いて興味を失った人は続報なんて見ないし、全てのデマが是正されたわけではない。
そういった報道の問題も重要だが、そもそも、仮に被害者と同じ状況でブランド狂いの風俗嬢が殺される事件があったとして、あんな理不尽な理由で殺されていいわけはないし、悪であるかのように叩いていいわけがない。
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西新宿タワマン刺殺事件も典型的だが、女性が被害者であるストーカー殺人・障害事件があると、たいして情報がないうちから「自業自得」から「被害者にも落ち度があったのでは」まで、被害者に問題があったとする意見が一定数出てくるのはいつものことだ。悪い女が罰せられる物語が好きな人がいるのである。
西新宿タワマン刺殺事件に関しては、そんな昔ながらの風潮に加えて、「フェミ対アンフェ」の構図・物語の中でフェミ叩き・女叩きのために事件が使われているという部分が目立ってしようがなかった。
ホストクラブの法的規制の話とかを巡る争いの延長線上で事件を利用しているアンフェ傾向のある人が目立つ、目立つ。その中には、時流を意識してアンフェ傾向の人が喜びそう(フェミニスト傾向のある人が怒りそう)なことをわざと書いてインプレッションを稼ごうとしている人や、ビジネスとして自分から煽るようなことを書いて盛り上げてから、まとめ記事にして儲けようという人もいるのだろう。とにかく、単なる被害者叩きとは違う人が目立っていたのである。
加害者は普通にストーカー
徐々に情報が出るようになり、悪質なストーカー殺人であるというのがおおかたの人の印象であろう。
当初に流通した加害者に都合がいい話は加害者自身と加害者から話を聞いていた加害者の父による証言に過ぎない。