谷本真由美(たにもと・まゆみ)
著述家、ITコンサルタント。シラキュース大学大学院国際関係論修士及び情報管理学修士、ITベンチャー、コンサルティングファーム、国連専門機関情報通信官、投資銀行などを経て、現在はロンドン在住。日米伊英での実務経験。代表作に『世界のニュースを日本人は何も知らない』シリーズ(ワニブックス)。
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病院に行けずに死ぬアメリカ
日本では左翼系の活動家や、研究よりもテレビに出るのが忙しい学者、なぜか英語すらできないのに海外事情を報道するジャーナリストまがいが、「海外の医療は大変充実していて何でも無料、日本よりもはるかに進んでいる、我が国の医療は貧しくてケシカラン!!」と吠えている。「海外デワー」と繰り返す「海外出羽守(注:海外と比較して日本を批判する人の俗語)仕草」のお約束パターンの一つである。
しかし実際にその「海外」とやらに住んでみると、それは事実と大きく違うということがよく分かる。
そもそも北朝鮮とルワンダとアメリカの富裕地域を全部「海外」と一緒にしている時点で、このようなタワケたちの知能指数の低さが表れている。
西成と芦屋の一等地が全部日本でございます、と言い張るようなものだ。
その連中は、実は海外には短期滞在しかしたことがない。駅前留学の経験すらないのである。さらにその短期滞在も出張半分の訪問だったりする。特派員とか駐在員といっても、英語すら志村けんの英語の授業のコントレベルで「じすいずあぺん」で、実は激安給料で雇った現地のバイトや非正規に仕事をやらせてなんとかごまかしている。ジャーナリストの場合も、現地のガイドやら「コーディネーター」と呼ばれる人間を雇って、自分がさぞ現地に詳しいようにみせかけるのだ。
郊外の中流以下が住む住宅地のことは分からないし、家の買い方も分からない、地元の社会保険や年金の金額だって分からないし、病院や福祉のことだって知るわけない。そもそも地元の「普通」の通勤すら体験しないわけで、だからこそ「海外には通勤ラッシュがない」とか言い張ってしまうのだ。
こんな連中が嘘八百を並べるのが得意な分野が医療だ。
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最近は日本の子育て支援が充実している。中学校卒業まで医療費の自己負担分がほぼ無料になっている自治体がかなりあるのである。がんだろうが白血病だろうが痔だろうが無料だ。
私の実家がある市の場合は、住民票がその市にあれば、市内だけではなく、なんと日本全国どこの病院で治療を受けても払い戻しがあり、実質自己負担分が無料だ。
これは他の国からすると驚愕である。
例えばアメリカの場合は、親が働いている会社の民間の健康保険に子供が加入することができなければ、病院に行けない。なにせ骨折だけで200万とか400万の請求が来る恐怖の国なのだ。
保険に入っていても、通える病院に制限があって、どこかで事故に遭っても「貴様は保険がないから死ね」と言われる。
治療費の上限や数十万円など高額な自己負担分がある上に、保険によっては延々とイチャモンを付けられて交渉をやらねばならない。保険屋もカネを払いたくないので必死である。
子供でも容赦はない。お前の親が保険がないのが悪い、俺は知らん。以上である。