悲劇のヒロインになったスシロー
回転寿司チェーン店大手・スシローといえば、炎上騒ぎだ。
広告の商品写真と実際の商品とが違いすぎる「写真詐欺」問題。広告を掲載しているのに該当商品の在庫が存在しない「おとり広告」問題。そして「スシローペロペロ事件」と近年、凄まじいペースで炎上が続いたのだからそう思われても仕方がない。
しかもそのなかで最も我々にインパクトを残した「スシローペロペロ事件」。これは前2つと違って、はじめてスシローが被害者となった炎上事件であった。
事の始まりは今年の1月下旬。若い男性客がペロペロと唾液をつけた手でレーンを流れる寿司に触ったり、湯のみを舐めまわす不快な動画がネット上に流出。この不衛生な行為が営業妨害にあたるのではと批判が殺到し、当事者と保護者が謝罪に追い込まれる事態となった。
しかし、被害に遭ったスシロー側は謝罪を受け入れず、6月8日に6700万円もの損害賠償を求めて大阪地裁に提訴。タレントの武井壮も「厳しい判決を望む」と発言し、スシローを応援するムードが広がった。
リスクを放置していなかったか
スシローの毅然とした態度に、ネットも概ね好意的。「応援します」「次のバカを生まないよう徹底的にやってほしい」「陽キャの人生が終わって飯ウマ」といった具合だ。
しかし、1つ気になる点がある。
今回の事件、スシローは完全に被害者側の立場を崩していないが、本当に男性客だけが悪いのだろうか? スシローサイドにも反省すべき点があったのではないか、ということだ。
そもそも、スシローの衛生状態は、男性客が唾液をつける前から、かなり酷かった可能性が高い。例えば、同業大手のくら寿司はホコリや飛沫を防ぐ「抗菌寿司カバー」を早くから導入してきた。かっぱ寿司は、コロナ禍以降、レーンを廃止したり商品の蓋を新たに開発するなどの感染症対策を行っていた。ではスシローはどうだったか。そのような措置がなされていない店舗が多く散見されたのだ。
誠に遺憾な話ではあるが、つまり、このような不衛生行為が生じる土壌はあったわけで、スシローは、不衛生かつ底辺が傍若無人に振る舞う環境を放置していたとも言える。
ペロペロ男1人が社会的制裁を受けたところで、客にマナー違反をさせない仕組みを構築しない限り、本質的にスシローの衛生面に不安があるのは変わらない。ネットにあげないだけで、不衛生な行為をしている民度の低い客はスシローにたくさんいる。こうした状況を知っておきながらリスクヘッジを怠っていたスシローサイドの責任は、決して看過されるべきものではないのである。
5月16日に、スシローのトップ水留浩一CEOが「NewsPicks」のYouTubeチャンネルに出演し、「彼は彼で被害者だと思う」「人生を狂わせてしまった」とペロペロ少年を許すような素振りを見せ好感度アップを図っていたが、結局は6700万円請求という二枚舌。
賠償金は現実的な額に落ち着くと見られているものの、果たして。あなたは、こうした被害者ビジネスをどう思うだろうか?
文/編集部
※2023年2月3日掲載の原稿を一部修正