ただし、車は「減価償却費」という項目になり、10万円を超える場合は長期間利用して、減価償却されるものと見なされる。他にもパソコンなど、10万円を超えるものはすべてコレ。例えば普通車の場合、耐用年数は6年と定められており、600万円で購入した車は6年間毎年、600万円÷6年=100万円の経費が認められる。まあ、結果として全額が経費になるのは変わらないので……。
フリーランスにとって、「パソコンや車は経費!」
車があるのに電車や飛行機を使った場合も経費として認められる。タクシー代も経費。ホテル代も経費。これらをひっくるめて「旅費交通費」として計上できる。行った先で取引先と飲み食いした料金は「接待交際費」という名の経費に。つまりプライベートの旅行でも「市場調査で夜は接待するので泊まらなければならなかった」と言い張れば、旅費はすべて経費となる。
フリーランスにとって、「旅行は経費!」
旅……あ、いや、出張へ行くのに旅のしおりでも作ろうとプリントした紙代やインク代などは「消耗品費」になる。旅先で車を足に使いたいとレンタカーした代金やガソリン代、高速代などは「旅費交通費」。旅先でハガキを買い、切手を貼って送った代金は「通信費」。旅先でアイドルのコンサートに行きたいけど、チケットを手に入れるのにはファンクラブに入らないと、というので入会にかかった費用は「諸会費」。市場調査に必要ですからね! 打ち上げの飲み食いは「接待交際費」。翌日、帰りの飛行機で本を読みたいと買ったお金は「新聞図書費」。家に帰って灯りを点けて、やかんに水を汲み、湧かすのにかかる電気代、水道代、ガス代は「水道光熱費」。お茶やコーヒーは「打ち合わせで飲みましたから」と言い張っての「消耗品費」。などなど……。
フリーランスにとって、「日常生活で必要なものはすべて経費!」なのである。
ものすごく真面目な人間であれば、プライベートと仕事を厳密に分けているかもしれないが、ほぼほぼすべての個人事業主は混同しているというか、意図的に混ぜている。すなわち、経費ではないものを経費として申告し、課税額を下げているのであるから、間違いなく脱税である。
ちなみに稼ぎの6割以上を経費にしてしまうと、脱税が疑われて税務調査の対象になってしまうため、5割程度にしておくというのが一般的である。すなわち稼ぎの半分しか課税されておらず、そうなれば自ずと住民税も下がる。二重に脱税しているとも言えるのだ。
片や、額面の半分を天引きされてしまう会社員や公務員。片や、稼ぎの半分を経費という名の生活費に充てられるフリーランス。
平等とは何かを考えさせられる由々しき事態である。
合法的脱税天国の牛農家と医者
経費を利用してこれだけ脱税しているにもかかわらず、さらなる穴を見つけて納税を免れようとするフリーランスが後を絶たない。「脱税が多い職業ランキング」順に、どのような手段で脱税をくり返しているのか見ていこう。
まず1位は調査市場最高の脱税額である「1件あたり約5000万円」の申告漏れを叩き出したプログラマー。
彼らがこれだけ稼ぎ出した背景には、コロナ禍で今までになくアプリやゲームの需要が高まったことが挙げられる。開発競争の最前線にいるプログラマーが儲かるのは当然だろう。
引く手数多で会社を辞めて、フリーになった者が申告を怠った例も少なからずあるだろうが、副業としてやって「バレないだろう」と高をくくっていた者もいるはず。他社に二重雇用されて、プログラミング対価を給与として受け取ってしまうと、本業の会社が当人の住民税を徴収できないといった事態が起きる可能性があり、これだとバレる。そこを外注扱いで報酬という形にすれば、本業の会社にはバレないのである。ただし、発注元に税務調査が入ったとしたら、脱税はすぐにバレる。国税は頑張れ!
2位はインバウンド(訪日外国人客)の和牛食人気で売上が伸びた畜産農業。つまり牛農家が主であるが、これは税制上の問題がある。何せ、畜産農家が飼育した牛を売却した場合、1頭につき利益100万円までは課税されないというのだから驚きだ。合法的脱税!
ちなみに黒毛和牛1頭の粗利は、数年前まで平均で100万円を切っていたので牛農家はほぼ税金を払っていなかったが、インバウンド効果による和牛の価格高騰で100万円を超えるものが増えてきたのだろう。下手すりゃ、牛を売った金に税金がかかることを知らない農家もいたかもしれない。それで一気に脱税ランクインというわけだ。
この、豚や鶏には存在しない牛だけの非課税特権は自民党の有力な畜産族議員の働きかけでできたのだが、今後、金額の引き上げがあるかもしれないので要注目。
この税制特権で最たるは日本医師会の政治力で成し遂げられた「年商5000万円以下の開業医」に対する特別税制。何の証書がなくても、売上の6割から7割を必要経費にできてしまうという。合法的脱税し放題!
その中で内科医だけが3位に浮かび上がったのは、「予防接種」という自由診察の賜物だろう。医療費負担がないため、保険証の提示はなく、いくらでも水増しできる。その他、高級外車を経費にし、愛人を業務実態のない看護師にすれば、脱税はいくらでも可能だ。バレても金を払えば済む話。