宮崎駿のインナースペースが生に近い形で表出している作品だ。駿視点のジブリ史のメタ表現として解釈する人もいるだろうし、精神分析的に宮崎監督の表現の源流にあるオブセッションを考察するような見方をする人もいるかもしれない。その人がどう観るかによって、観る人の宮崎駿観、その人の内なる駿が試される作品と言えるかもしれない。そして、普通に何も考えずに観ても面白い作品だと思う。
万人が認める傑作ではないだろう。観る人によっては受け付けない人もいるだろうし、過去の作品と比べて否定する人もいるだろうし、良く言う人は宮崎駿というバイアスがかかっているだけと考える人もいるかもしれない。 まあ、個人的には監督が誰だか知らない人でも変な映画として好きになるような気がする。
それにしても、この不思議な作品を現在80歳をこえる老人が数年かけて人知れず作り続けていたというのが、愉快でたまらない。タイトルに続いて(タイトルの時点で「なぜ、そこから引用?」と不思議な気分になったが)、鳥人間みたいなものが描かれたポスタービジュアルだけが公開された時、あまりの不可思議さにTwitter上ではポスターの人物や内容を予想する大喜利めいたものが盛んに行われていたのだが、それらを軽くぶっちぎるような予測できない変な作品だった。宮崎駿という人は本当に不思議な人だなと思う。
〈金曜連載〉
写真/『君たちはどう生きるか』ポスタービジュアル (C) 2023 Studio Ghibli
PROFILE:
ロマン優光(ろまんゆうこう)
ロマンポルシェ。のディレイ担当。「プンクボイ」名義で、ハードコア活動も行っており、『蠅の王、ソドムの市、その他全て』(Less Than TV)が絶賛発売中。代表的な著書として、『日本人の99.9%はバカ』『間違ったサブカルで「マウンティング」してくるすべてのクズどもに』(コアマガジン刊)『音楽家残酷物語』(ひよこ書房刊)などがある。
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