PR
PR

君たちはどう生きるか:ロマン優光連載249

連載
連載
PR
PR

宮崎氏らしい「活劇」であり、ファンタジー作品であるのだが、いつものそれとは少し雰囲気が違うように感じる。いつもに比べると、エンターテイメントとしてわかりやすい作品ではなく、観客に不親切な作品かもしれない。

作中、かっての宮崎アニメの名シーンを思わせるようなシーンがいくつもある。それはオマージュであるというより、監督の脳内に刻まれた様々な光景を、そのまんま映像にしているのが本作であるように感じた。今までの作品では、そういった脳内宇宙の一部を作品ごとに合わせて上手く加工して出していっていたのを、今回はそのまんま気の赴くままに出していったというか。オマージュというより、各シーンの元になった宮崎監督の脳内にある原型をそのまんま出していった結果なのではという気がする。

今までにないぐらい、宮崎駿を生々しく表現した作品だ。よそいきの服を着ていない全裸の駿というか。計算され抑制されてきたような部分を意図的に外しているかのようで、宮崎監督の無意識が加工されずに表出しているかのようでもあり、夢のような手触りがある。アート的な部分が強いという解釈をする人もいるが、そういったところから生まれてくるのだろう。

宮崎監督というのは怖いもの、不気味なものを描くのが上手い人ではあるが、その部分を全体的に押し出してくる人ではなかった。しかし、『君たちはどう生きるか』は非常に生々しく怖かったり、不気味だったりするところが多い。今まで意図的に描いてなかった部分まで描いてるような生々しさ。夢みたいな手触りと書いたが、夢の中で起きる不可解な出来事、登場人物のような怖さ、不気味さがある。

わかりにくい、説明不足、バランスが悪い。そう思わせる部分もある。それを監督の老いによる能力の低下であるという風に感じる人もいるだろう。しかし、さすがにやろうとするなら、もう少し過不足なくまとめることもできるのではないか。なんというか、そういうことを放棄して、自分がやりたいことだけやったというのではないだろうか。

タイトルとURLをコピーしました