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松浦大悟「同性婚に反対したら即差別主義者認定するのは大間違い」

社会
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「差別は許されない」の意味

21世紀最後の人権問題と言われるLGBT問題は、1960年代の公民権運動のような素朴な構図を持たない。複雑で一筋縄ではいかない難問だからこそ、マイケル・サンデル氏の『白熱教室』でも度々取り上げられるテーマなのだ。次は、法律に「性的指向および性自認を理由とする差別は許されない」との言葉が入るとどのようなコンフリクトが生じるか見ていこう。

【ケース1】車椅子介助者からのクレームは差別か?

筆者が住んでいる秋田県では2022年にあらゆる差別の禁止をうたう多様性条例が施行された。それに伴い23年には公共トイレの表示の見直しが始まり、秋田市消防本部4階の多機能トイレがオールジェンダートイレへと変貌した。入り口には車椅子や妊産婦のピクトグラムも掲げられているものの、一際目立つレインボーカラーのピクトグラムに圧倒されている。トランスジェンダーが入りやすいように配慮したのだという。

ところがこれに、車椅子ユーザーの介助者から批判が寄せられた。多機能トイレを着替えに利用するトランスジェンダーが多く、待っていたら中から女装した男性が出てきたこともあったそうだ(国連の定義に従うと、異性愛者の女装家はトランスジェンダーに含まれる)。車椅子ユーザーが使えるトイレは数少ないわけだから、多機能トイレの使用は障がい者や乳児連れなどに限定してもらいたいというのだ。

さてこの場合、差別をしているのは車椅子ユーザーに配慮しないトランスジェンダーか。それともトランスジェンダーのトイレ利用にクレームを入れる車椅子介助者か。

【ケース2】自治体の婚活イベントは差別か?

広島県の安芸高田市は、男女の結婚を後押しする婚活事業を2021年度限りで廃止した。人口減少対策の一環として10年続けてきたが、LGBTへの配慮を欠いているとして打ち切りを決めたという。

さて、全国各地の自治体で行われている異性婚を前提とした婚活パーティーはLGBT差別か否か。

同性婚問題で争点になっているのは、生殖可能性のない同性愛者にも婚姻を認めるかどうかである。わが国の結婚制度は、子どもを産み育てることをベースに構築されているというのが保守派の主張だ。もし修正LGBT理解増進法ができれば、こうした考え方自体が「性的指向および性自認を理由とした差別」だと断定される可能性はある。そして、婚姻制度が生殖可能性のあるカップルの優遇目的ではないとなれば、少子化の懸念を背景に行政が乗り出している婚活イベントは、税の使い道として公共に反しているとの指摘を受けるだろう。「LGBTが増えると少子化になる」というのは暴論であり直接の連関はないが、このような理屈で異性愛者の出会いの場がなくなっていくのだとすると、その分、今より子どもの生まれる数が少なくなることは間違いない。

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