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コブラ、そして俺とサイコガン:ロマン優光連載257

連載
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コブラの源流

小学校高学年になり、星新一から始まってSFを読むようになった自分は、父の蔵書に大量にあったハヤカワSF文庫を読み漁るようになった。そんな時に出会ったのが『追憶売ります』というアンソロジーだ。P.K.ディックによる表題作を読んだ時に驚いた。

「これ知ってる…コブラで読んだやつだ…」と。

アンソロジー『追憶売ります』の発売は78年。今でこそ映画『トータルリコール』の原作として知られているが、日本でディックの短編集に収録されるまでに時間がかかったし、ディック自体がマニア以外には知る人ぞ知る作家だった。そんなマイナー作を発売してすぐに換骨奪胎して自作にとりいれた寺沢武一はそうとうマニアックで勉強家だったのだなと思う。

(今の感覚で著作権云々の話をする人もいるかと思うが、水木しげるの諸短編に見られるように、昭和のころまでは漫画が他ジャンルからパクってくるのはよくあることで、著作権の意識など一般的に浸透していなかった時代のことだというのは考慮していただきたいものだ)

『追憶売ります』にはマイケル・ムアコックの「この人を見よ」も収録されている。コブラにはムアコックという名のキャラクター(「二人の軍曹」)も登場しているが、全体的にムアコックの「永遠のチャンピオン」シリーズの影響が色濃くある。「先生が『追憶売ります』を買ったの、ムアコックが載ってたからかな、載ってるのはヒロイック・ファンタジーじゃないタイプだけど」とか思ったりもするが、今となっては永遠に答えを知ることはできない。

父の蔵書を漁るうちにまた新たな出会いがあった。コブラ、ルパン三世と同じくジャン=ポール・ベルモンドの顔を持つ男の系譜に連なる男・犬神明との出会いだ。平井和正の産み出した、もっとも魅力的な男、アダルトウルフガイ・犬神明。コブラとよく似た話し方をする不死身の狼男は、やはり自分のお気に入りの一人だ。

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小学校高学年から中学生にかけて様々なコブラ的なものに出会った。C. L.ムーアの産み出したノースウエストスミスシリーズの一冊、『大宇宙の魔女』と出会ったのは栗本薫の『グイン・サーガ』シリーズのあとがきかなにかがきっかけだったか。コブラにはノースウェスト・スミスの面影がさしているが、シャンブロウのような女性たちも多く登場している。「黒竜王」でのノースウェスト・スミス「黒い乾き」のオマージュに気づいたのは大人になってからになる。

成長するにつれ、コブラの源流にあたるものへの出会いが多くなるが、その度にコブラのことがよけいに好きになった気がした。ルーツを知れば知るほどコブラの味わいは深くなる一方だった。コブラとの出会いが新たなものたちへの出会いをうみ、人生を豊かにしてくれたといってもかまわないだろう。

スペース・オペラ。ヒロイック・ファンタジー。ハードボイルド。様々な物語が『コブラ』にはある。

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