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山川純一:サムソン高橋「ハッテン場から愛をこめて」連載5

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「やらないか」「ウホッ! いい男」「すごく…大きいです」…インターネットミームとして擦り倒された数々の台詞を生み出したこの作品は、87年にゲイ雑誌『薔薇族』の別冊コミックに掲載された短編漫画だ。長らく誰の記憶からも消え去っていたこの作品が再び、というか初めて注目されたのはもう20年前になる今世紀初頭。アンダーグラウンドな掲示板に突如貼られ、瞬く間にインターネット界を席巻したのだ。ネットで擦られまくる同性愛ネタとして、野獣先輩や変態糞親父や淫乱テディベア(興味のある方は各自検索を)などの先駆け的存在である。

これらははっきりと、笑いものだった。自分を正常と思う者たちが安全圏から弄ぶ玩具だった。ある意味保毛尾田保毛男よりひどいが、ネットの海に非難しても虚無だろう。

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『くそみそテクニック』がブームになってからほどなくして、山川純一の『薔薇族』に掲載された作品集が出版された。そこで明らかになったことだが、彼は現在消息不明。ならば著作権はどこにあるのか? と思ったが、当時の『薔薇族』はライバル誌の出現で経営困難だった。詮索するのも野暮だろう。正直、墓荒らしの印象は否めない。

そして今回のアニメ化で知ったのだが、現在の山川純一の著作権はサイゾーにあるという。(連載媒体である)『実話BUNKA超タブー』で言うのもなんだが、その経緯については下衆な想像しかできない。確実なのは、インターネットで揉みくちゃにされたにせよ墓荒らしにせよ、消えた作家の作品集がそれをきっかけに出版されたのは価値があることだが、今回のアニメ化は「一般社会が同性愛を笑いものにしている」と非難するに値もしない虚無なんだろうな、ということだけだ。

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生きていればおそらく70歳前後であろう山川純一については死亡説も囁かれている。ただ私は、『薔薇族』の編集長が語った彼の人物像——線が細く、無口で、暗く、ゲイにはもてそうにない青年——が、生きていても自分の作品が笑いものとして消費されることに耐えられたかどうか疑問に思う。そんな彼はきっと、道化を鎧として使うこともできなかっただろうから。

 

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PROFILE:
サムソン高橋(さむそん・たかはし)
鳥取県出身。ゲイ雑誌『SAMSON』 編集部で編集者およびライターとして勤務し、同社の『SAMSON ViDEO』も制作。2002年に退社。その後はフリーライターとして活動。能町みね子と同棲生活をしている。主な著書に、『世界一周ホモのたび』(ぶんか社)シリーズ。
twitter:@samsontakahashi

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